無料経済とも言われるインターネットだが、オンラインゲームはユーザー課金に成功している。その成功の秘密とは何なのか、「ブラウザ三国志 for mixi」を例にソーシャルゲームのビジネスモデルを解説する。 [野島美保,Business Media 誠]
ブラウザ三国志では、ゲームアイテム課金をしている。城下町での施設建設には数時間かかるが、その建設時間を省略する「即完了」に150CP(150 円)など、ゲームを続けていく上であったらよいと思うような機能やさまざまなバーチャルアイテムが整備されている。上級者になってくると、強い武将カードが当たるくじ引き(ガチャ)も人気だ。
このゲームがマネタイズ志向であるのは、こうしたきめ細かいアイテム販売システムだけではない。課金を可能にしているのは、SNSコミュニティとバーチャルのゲームコミュニティとのバランスのとり方が絶妙であるからだと、筆者は分析している。
ほかのアプリと同様に、SNS友人を招待して一緒にプレイすることもできる。しかし、陣地を増やし天下をとろうとすると、数百人規模の仲間が必要となる。そのため、ゲームを進めていくにつれ、通常のSNS友人だけでは立ち行かなくなってくる。また、招待制を使っても、友人の隣に城を構えることはできず、ランダム配置となるため、必然的に近所の他人と付き合わなければならない状況に置かれる。
このゲームをしていると「遠くの親友よりも近くの他人」ということを痛感させられる。AQインタラクティブの石井武ネットワークコンテンツ事業部長は「同盟を組むか対戦するか、他ユーザーと接点が生まれるようなゲーム作りをしている」と語る。
ブラウザ三国志におけるフック・リテンション・マネタイズ
ブラウザ三国志の良さを、フック・リテンション・マネタイズの順にまとめてみよう。まず、フックとしての分かりやすさである。三国志というなじみのあるテーマもさることながら、領地が広がる様子や城内に建設される施設など目に見える成果があり、何をするゲームか想像がつきやすい。作物を育てる農園系アプリなどにも共通する分かりやすさである。
次にリテンションであるが、進めていくうちに非常に奥深いゲームであることが分かる。分かりやすさだけでは、すぐに飽きがくる。ゲームは初心者にとって始めやすく、上級者にとっても楽しめるという、分かりやすさと奥行き感の両方が必要とされる。
施設を建設する順序、陣地をどう広げていくか、武将のスキルアップ、誰と同盟を組むか、勝ち馬に乗るのか自分が天下を目指すのか……。このように考えるべきことが多いと、攻略や情報交換のためのWebサイトが登場したり、掲示板にスレッドが立ったりして、バーチャルコミュニティが活性化される。何でも親切に分かりやすいことが良いわけではない。適度に分からないことがあると、話題を投下することができる。このゲームが「ハマれるアプリ」と称されるのには、こうしたコミュニティ回りの良さも貢献している。
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ソーシャルゲームビジネスモデル
2010.03.15
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