ブラウザ三国志のビジネスモデル~何もないところに欲を作り出す

2010.03.15

経営・マネジメント

ブラウザ三国志のビジネスモデル~何もないところに欲を作り出す

ITmedia ビジネスオンライン
“ニュースを考える、ビジネスモデルを知る” ITmedia 編集部

無料経済とも言われるインターネットだが、オンラインゲームはユーザー課金に成功している。その成功の秘密とは何なのか、「ブラウザ三国志 for mixi」を例にソーシャルゲームのビジネスモデルを解説する。 [野島美保,Business Media 誠]

 ソーシャルゲームは、このSNSコミュニティをフックに利用する。自社ゲームへの定着には、日記とは違うユーザー交流、継続性を持たせたゲーム作り、ゲーム内コミュニティの育成などの方法がある。その先のマネタイズのフェーズでは、現行の広告収入やアイテム課金のほかに、ゲーム自体の有料化やプラットフォームとの折衷的な料金システムなど、さまざまな可能性が考えられる。

 現在、広告単価やレベニューシェア(利益分配)の割合など具体的な料金が話題になるものの、リテンションからマネタイズへの「流れ」についてはほとんど議論されていない。重要なのは、フック・リテンション・マネタイズの各フェーズがうまく流れるように設計することである。図中では例として、1つの「流れ」を矢印で示している。どういう「流れ」を作るかが、そのゲームの基本設計となる。もちろん、これからさまざまなゲームが出ることで、新たな矢印が描かれるだろう。

 今回は、「ゲームの友人」から「アイテム課金」につなげる流れに注目して、ブラウザ三国志の事例を考えたい。前回(なぜ仮想アイテムを買うのか?~ソーシャルゲームビジネスモデル1.2)も述べたように、オンラインゲームの楽しさは「見知らぬ人と一緒にプレイできること」にある。そこでしか会えない「ゲームの友人」がいるからこそゲームへの執着が生まれる。それが、何もないところに「欲」を作り出す鍵となるのだ。SNSのリアル人間関係と、ゲーム別に形成されるバーチャル人間関係をどうマネジメントするか、この新しい課題について考えてみよう。

ブラウザ三国志の魅力


 広告収入が主流と考えられているソーシャルゲーム業界において、ユーザー課金を正面から狙ったのが、AQインタラクティブの「ブラウザ三国志」である。もともとSNS用に作られたものではないが、2009年8月にmixiアプリとして「ブラウザ三国志 for mixi」がリリースされた。「ブラウザ三国志 for mixi」では、2010年1月末現在の登録ユーザーは45万6000人、この1カ月で17万人の伸びをみせている人気ゲームだ。

 配下となる武将を育て、施設を建設して自分の城下町を作り、ほかのユーザーと合戦をして陣地を広げていくゲームである。武将はカード式になっており、他ユーザーとトレードすることもできる。このゲームの究極の目的は、ゲーム世界で天下をとることである。天下をとるには、武力で戦うだけでなく、同盟を組んで味方を増やすなど、ユーザー同士の外交が必須となる。

次のページブラウザ三国志におけるフック・リテンション・マネタイズ

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