会社で“採用ミス”という言葉を聞いたことがある人も多いのでは。会社が期待したほどの実績を残せていない人のことを指すケースが多いが、このようなレッテルを貼られないようにするためにはどのようにすればいいのか。2人の専門家に話を聞いた。 [吉田典史,Business Media 誠]
3週間ほど前にうかがった大手メーカーNの人事部社員(役職者)がこう言っていた。「毎年、“採用ミス”と言えるような人が少なからずいるんですね。採用試験では厳しいふるいにかけているのですが……」。採用ミスという言葉に定義はないが、ある程度、共通認識らしきものはあると私は思う。それは新卒にしろ中途にしろ、入社して数年間の言動や仕事の実績などが期待したほどに達していない人のことを意味する。
今回の時事日想は、人事コンサルタントの2人を取材した。お尋ねしたポイントは、新卒もしくは中途採用試験を経て入社した人が「採用ミス」といった評価を受けないようにするためにはどうすればよいか、というもの。数百社の企業から労務相談を受けてきた特定社会保険労務士・冨樫晶子氏は、業界・業種・規模を問わず、採用ミスは少なからずあることを認めたうえでこう語る。
「新卒の場合、会社はすぐに大きな成果(実績)は求めていないでしょうね。むしろ、仕事に興味や関心を持って取り組むことができるか、職場や仕事などの状況を把握した上で行動を取ることができるかなどを評価していると思います。当然、上司との良好な人間関係も大切な要素です」
冨樫氏が繰り返し述べたことは「仕事への姿勢」だ。これはメディアなどではあまり指摘されないが、会社員をしていく以上、理解しておきたい。いま、私の手元に首都圏に拠点を設ける信用金庫の人事考課表がある。これを基に説明しよう。しかしこの資料を渡してくれた人と私との間で合意があり、そのすべてを掲載することはできない。あくまで部分的に紹介する。
20~30代前半までくらいの一般職(非管理職)を対象にした評価項目は、主に「業績評価」と「行動評価」の2つである。前者はその期間における実績であり、後者はさらに次のような項目で構成される。「協調性」「積極性」「能力開発への取り組み」など。
“採用ミス”と言われかねないかもしれない
この約10年間、成果主義制度が浸透して以降、「業績評価」だけがメディアで強調される。また、会社のからくりをよく知らない評論家や作家など有識者が、このメディアの論調をさらに増幅させるような“根拠なきデマ”を流す。しかし、私が取材していると「業績評価」だけで評価する会社は見当たらない。ほぼすべてが、「行動評価」と「業績評価」の双方の観点から社員をふるいにかけている。ただし、「行動評価」を巧妙にしのばせてある会社もある。大切なことは、その比率である。この信用金庫は「業績」が30%、「行動」が70%だ。多くの中堅・大企業では、特に20~30代半ばくらいまでは「行動評価」の方に重きを置いている。
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