2016年東京オリンピックの招致活動費の総額は、150億円。財源は都税から100億円と民間資金50億円で賄うはずだったけれど・・・結局、6億円足りなかったという。はてさて、この6億円ものお金、誰が補填することになるのか・・・。
こんなニュースが、一昨日流れた。一昔前なら、決してメディアでは取り上げなかったであろう「行政と広告代理店」の関係を国民にさらけ出す報道である。ちょっとビックリ!メディアや代理店の権力構造も確実に変わりつつあるのだと実感させてくれる。
※記事はasahi.com 2010年1月31日3時1分掲載より
「東京五輪招致委、電通に債権放棄要請 不足分の6億円」
ニュースによると、民間資金分の49億円の支出に対し、収入は民間からの寄付などの約43億円にとどまったため、6億円の赤字になる。その不足の約6億円について「債権放棄を頼めるのは最大の支払先の電通しかない」と判断したというのだ。
コペンハーゲンで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で流したPR映像(約10分間)の制作費が約5億円だったことが判明し、その金銭感覚に異議が続出しているというニュースが流れたのは、昨年の秋である。五輪招致での東京都から電通への委託契約費は約53憶円にのぼると言われている。東京オリンピックの招致活動費の総額の3分の1以上が、電通1社に流れている。それも、そのほとんどが随意契約で・・・。
東京都は、都民感情を考慮すると税金はこれ以上投入できない。だから、、、民間企業で、いちばんおいしい売上げになった電通にかぶってもらおうというのだ。「10分の映像で5億円の制作費を計上するようなドンブリ勘定で一番利益が出ていそうだから・・・電通さん。6億円の債権を放棄してくださいよ~」ということである。
でも、これってありなのだろうか・・・。民間からの寄付が予定より少なかったから債権放棄してくれっていうなら、最初からありえない寄付額を予定して確信犯で債務逃れができるということになる。行政がこれをやったらおしまいだ。
契約書にも明記されていないような無茶な債権放棄をお願いする東京都のこの厚かましさは、裏を返すと「もたれあいや癒着」がありましたということを証明しているようなものである。
コンサルタント費や企画費など、原材料費のかからない経費が計上できる広告代理店と行政とのつきあいは、ブラックボックスになりやすい。複雑な大人の事情が、その「大きなお金」に絡み合ってくる。
東京オリンピック招致の大義名分である「東京オリンピックの経済効果は約3兆円」という試算は、実は、電通が行っている。それ自体、突っ込み所満載なのだが、マスメディアは、その矛盾を大きく取り上げない。
なぜなら、オリンピック招致の評価で、東京の一番のネックとなっていたのは「世論の支持」だったから。世論の支持率を上げるために、電通は権力を存分に発揮し、メディアでの情報統制をちゃんと行っていたからである。
そう、東京オリンピック招致活動の矛盾を全部引き受けてビジネスにしているのが電通なのである。
東京都は、その役割を織り込んで随意契約にしたであろうに・・・。
利権が大好きな百戦錬磨の大人達は、いつも、最後にムリを聞いて貰えるところ=ブラックボックスを用意する。そして、それらは、表に晒さないという暗黙の流儀があった。しかし、東京都の「6億円債権放棄要請」は、その流儀に反する。
利権の網の目に、確実に綻びが生まれている。政権交代後、「行政と広告代理店」の関係に、さらに大きな潮目が訪れている。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。