~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者の商社マン生活を参考に小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
「花のパリか・・・。 ロマンチックだ。 」
宮田はそう勝手に夢想しながら、成田発スペインマドリッド行きの飛行機で、
ワインを楽しんでいた。
というのも、日本非鉄金属の鹿沼工場向けに大日商事経由スペインのメーカー
から輸入した工作機械に不具合が生じ、その為、日本非鉄金属からクレームを
受けていた。
そのためのメーカーとの対応策のネゴ(交渉)のために出張するのであった。
現地のマドリッド店の店長は、津田沼店長という方。
出身は、エネルギー化学プラント部で、宮田の所属する機械・プラント部
とはビジネス境界をめぐってしばしば争う犬猿の仲ではあったが、色々
入社の頃から同じ関西人ということで個人的に何かと可愛がってくれた
のであった。
現地で数日間にわたり、任務である、メーカーとのクレーム交渉を無事処理
した宮田は、その報告のために、津田沼店長の部屋をノックした。
津田沼店長からも、大事な話があるから、帰国前に必ず店長室に顔を出す
ようにという伝言をホテルのフロントから受け取っていた。
「宮田君。
おー、久しぶりやなー。 元気にしとったんかー!
まー座り、座り」
いかにも人懐っこそうな関西のおっちゃんという感じの津田沼店長は、
宮田の顔を見るなり、そう言って歓迎した。
「あのな。
早速やけどな。宮田君。
実は、俺は前から君もそろそろ駐在に出てもええ時期やと思ってたんや。
海外駐在はええぞ!
海外に出て、見知らぬ土地や文化・風習に触れ、海外から日本を見て、
思う存分仕事して、見聞を広げて、人脈創って、一回りも二回りも
大きな人間となるえーチャンスや。
どや、そろそろ!」
「も、もちろん、自分もそろそろ海外駐在に出たいと前から思ってました」
津田沼店長は、間髪いれずに答えた。
「よっしゃ、分かった。
あのな。宮田君。
ここだけの話やけどな、マドリッド店に機械担当の人間がいることは
承知やと思うが、その人間が、過労で体調壊してしもてな。
急遽帰国する必要が出てきてしもたんや。
その後釜にどや? 君なら大丈夫や。
今後スペインは欧州が統合する中で、鉄鋼をはじめとする重工業に政府も
民間も盛んにテコ入れすることが予想され、大日商事の機械部門としても
極めて大事なお客さまのビッグプロジェクトが目白押しなんや。
どや?」
< えらい急な話やな。 これまた。
それにしても、パリの話ちょっと残念やな。
まー、あれもまだどうなるかわからんし、
マドリッドかてヨーロッパの一流都市や。
かっこええことに違いない >
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商社マン しんちゃん。 走る!
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