「同質化」という戦略がある。他社が開発した商品とそっくりな特性を持った商品を後から開発し、上市する戦略だ。既にヒットしている商品であれば、ハズレ商品を開発してしまうリスクがたいため、かなりオイシイ手段である。
これは明らかに「同質化」だろうという商品は、アサヒ飲料の「食事の脂にこの1本」だ。ニュースリリースには、<脂っこい食事にぴったりの中国茶>とある。これは、どっからどー見ても、サントリーの「黒烏龍茶」対抗だ。
しかし、サントリーとアサヒ飲料では飲料メーカーとしては明らかにサントリーが上位企業だ。下位企業が上位に同質化を仕掛けるのは定石ではない。
実は、「食事の脂にこの1本」も非常に巧妙な差別化がなされているのだ。価格は140円(税別)で、容量は490ml。黒烏龍茶は160円で350ml。一般に「特保」の指定を受けている商品はそのプレミアム分、価格が高い。アサヒ飲料はあえて、特保を取らずに通常の飲料の価格・容量で勝負しているのだ。もちろん、特保がない分、効能は担保されていない。しかし、昨今のデフレの世の中で、「安くていっぱい飲めるし、”食事の脂に”と言っているなら間違いないだろう」と選択する消費者も多いのではないかと踏んだのだろう。この例は、あえてスペックを一段落としてリーダー企業が作った市場のおこぼれをかすめ取る、フォロアーによる「模倣戦略」であるとも解釈できる。
アサヒ飲料の狙いはまだある。類似商品に「香るプーアル茶」がある。「脂流食楽シリーズ」というネーミングが「食事の脂に」と同様な効き目を期待させるが、どれほど明確なアピールではない。実は特保飲料には「体型のことを気にしていると思われたくないから、手が出せない」という女性も多い。そのニーズギャップを拾おうとする狙いだろう。
リーダー企業に戦いを挑むチャレンジャーは、リーダーの10倍、知恵を絞っている。単なる「模倣商品」と見てしまうのではなく、どんな知恵を絞った成果の商品なのか考えてみるのも勉強になるはずだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。