普及が進まないという3人乗り自転車。その原因と対策をフレームワークで考えてみよう。
■観察可能性
導入前の状態と比較して、明らかに高い効果を確認・実体験できること。この要件を考えても、やはり試用による体験が重要であることがわかる。
以上のように、ポイントは市川市の事例にあるように、「試用」である。
それを踏まえて、対象者をどのように態度変容を促していけばいいのかを別のフレームワーク、AMTULモデルで検証しよう。AMTULとは、認知(Aware)、記憶(Memory)、試用(Trial)、本格的使用(Usage)、ブランド固定(Loyalty)の略である。
【A】まず、相対優位性の項でも述べたように、3人乗り自転車の必要性を有用性、導入しない場合のリスクを十分認知させる。
【M】今までも散発的に上記の広報は行われているが、対象者の記憶に残るようにしなくてはならない。本来、専用車以外で3人乗りをすれば道路交通法の定めによって「2万円以下の罰金又は科料」となる。該当者を見かけた際に警察官などが注意し、取り締まる代わりにチラシなどを手渡してはどうか。
【T】一番のキモである試用だ。地方自治体が中心となって、3人乗り自転車試用会などを定期的に開催してはどうか。そこで、有用性を実体験できれば購入検討する生活者も少なからずいるだろう。購入助成制度を設けている地方自治体で、なかなか応募者が集まらないケースがあるようだが、試用を経てからであれば応募数も増加すると思われる。
【U】一度きりの体験では十分な効果実感ができない可能性も高い。市川市のように、一定期間の貸し出しができればさらに効果実感ができるはずだ。両立性を考えれば、前述の通り以前の自転車の預かりも検討する。
【L】有期の貸し出しを経て、3人乗り自転車の効用を十分実感した後に、補助金を用いた購入を促進。前の自転車が不要であれば、通常の粗大ゴミ廃棄費用を減免すれば、さらにハードルは下がるはずだ。
以上、普及の阻害要因を分解して明確化し、対象者の態度変容をどのように促せるかを検討してみたが、各自治体での具体的な取り組みに期待したい。
※本稿は以下の記事を参考に執筆した
<「3人乗り自転車」普及進まず 無料貸出始める自治体も>(2009年12月7日@niftyニュース)
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jcast-55106/1.htm
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。