ビジョナリー石塚しのぶ氏の著書『ザッポスの奇跡』。この本には、これからの差別化戦略について画期的な方向性が示されている。
ザッポスとは何者か
そして極めつけのセリフがこれだ。
「顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはない」
そうザッポスは靴の販売企業ではないのだ。
「ザッポスは、『たまたま販売業を営んでいるにすぎない』、サービス・カンパニーです」
こうしたザッポスのエッセンスを抽出しながら書かれた本書では第五章、第六章こそが著者のダイレクトメッセージだと思う。第五章では、これからの企業にとっていかに企業文化が大切かが丹念に説かれている。
企業文化で差別化できる
ザッポス成功の最大の理由は、何よりもまず企業文化を大切に育てる経営者のビジョンがあったからだ。靴のネット通販という資本力さえあれば誰でもできるようなビジネスで、いかに差別化を図るのか。答えは企業文化にある。このモデルは、商品での差別化に悩む多くの企業にとって極めて有益な示唆となるはずだ。
さらに第六章ではザッポスを例に引きながら、企業文化を確実にはぐくむための方法論が解説されている。詳細は本書に当たっていただくとして、一点だけ紹介するなら、入り口の決定的な大切さ、ということになるだろう。
ザッポスには採用辞退ボーナスという制度がある。4週間続くトレーニング・プログラムの第一週目を終えた新入社員に対して、2000ドルの『採用辞退ボーナス』を提示する。ただ「お金のために」働きたいと思っている新入社員をあぶり出し、排除するための仕掛けである。
ここまでして入ってくる社員をふるいにかけるということは、そのためのふるい自体がどれほどきめ細かく考え抜かれているかの証ともいえるだろう。
競争力に悩む企業にとっての福音
日本風に表現するなら、まさに企業は人なりなのだ。ところが、この言葉の風化が今日本で、どれほど進んでいることか。逆に確固とした企業文化を持ち、その文化の中で働くことにともに生き甲斐を持てるパートナーが集まった人間集団が、どれほど強くなれるか。著者が何より訴えたいのは、このメッセージではないだろうか。
まだまだ相対的に見れば技術面で優位にある日本企業が今後、さらに厳しくなる競争環境の中で生き残るカギ「企業文化」の本質的な有り様を、本書は教えてくれる。「うちの商品は、どこと言ってそんなに代わり映えしないからなあ」と言い訳ばかりしている経営者はもとより、営業に携わる人たちすべてにも、一読をオススメする。
同書の著者・石塚しのぶさんが書かれているブログも、ぜひ一読を。
→ http://www.dyna-search.com/j/book/
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