成熟期~衰退期の商品・サービスをかかえて悩んでいる人も多いだろう。もう一度盛り返そうとしたら、まず何を考えればいいのか。
そもそもカラオケボックスとはどのような存在であるかを考えてみれば、<カラオケボックスは、独立性の高い空間で仲間内だけでのカラオケが楽しめるようにしてある娯楽施設である>とWikipediaで定義されている。つまり「中核価値」は「カラオケを歌う」ことである。それを実現する「実体価値」が「個室・防音」で、中核の実現に直接影響はないが魅力を高める要素である「付随機能」が「飲食の提供」である。
「価値構造の転換」が衰退期にあるカラオケボックス活性化のカギなのだ。「中核」をあえて外して「実態」の「個室・防音」を中核に高める。それを求めるニーズは市場にないか考える。記事では自身もミニチュアダックスの飼い主だというシダックスの担当者が語っている。<「街に犬を連れて入れる場所は少ない」と思っていた。それならば、大勢の人が集う場所であるカラオケルームで、その受け皿を作ることができないかと考えた>と。
子連れ主婦のおしゃべりの場としての利用も同様だ。「こども連れで周りを気にせず楽しく食事ができるところが少ない」というニーズギャップをカラオケボックスが吸引しているのだ。本来、付随機能である飲食は、「味とメニュー数」を確保することで、「食事とおしゃべり」という、求められる「中核」を実現する「実体」に昇格している。
「貸し会議室の料金は意外と高い」というニーズギャップを「個室」という実体を中核に昇格させてすくい取った「会議利用」への対応は、液晶画面のPC入力端子程度なので特に何かを付け加える必要もない。。
「音楽スタジオの利用料金が高い」というおやじバンドも「個室・防音」が中核で、音楽用パワーアンプを実体として付加して取り込んだのである。
バー併設は「一次会二次会をまとめてやってしまいたい」というニーズ対応だろう。カラオケしながらでも飲食はできる。一次会でガッツリ呑み喰いしてしまうより、バーでちょっと軽くの方が安上がりだし、面倒でない。既存のカラオケボックスの店舗に「付随機能」としてのバー設備を付け加えて提供できる効用である。
カラオケボックスの衰退からの返り咲きは、「価値構造の転換」という「引き算」と「足し算」である。中核として欠かすことができないと思いがちな「歌う」を取り去って考えてみる。すると、中核は何になるのか。「個室・防音」が昇格した。それに何を実体や付随機能として付け加えればいいのか。
一連の展開は全て、市場のニーズに注目して、大胆に発想の転換をして「引き算」「足し算」をした結果である。今後、市場の回復がどのように図られるのか、継続して注目したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。