食物繊維入りのコーラの発売である。「コカ・コーラ プラス ファイバー」。
ともあれ、「プラス カテキン」は従来の「コーラで健康?」というポジショニングとその「味」のビミョーさで、今回も早くもネットで話題になり始めている。話題性という意味では成功しているといっていいだろう。
そう、「コカ・コーラ プラス」ブランドの狙いは「話題づくり」ではないかと考えられるのだ。
コカ・コーラの競合といえばペプシである。ペプシは「変わり種ペプシ」が毎年初夏と晩秋の風物詩として定番化し、毎回コンスタントに大きな反響を呼ぶようになった。今年も「しそ」に続いて今月20日に発売された「あずき」が大反響である。
日本のコーラ市場で80%という強大なシェアを持つコカ・コーラは無敵のリーダーだ。リーダーの戦いは常に全力で相手をたたきつぶす勢いで展開される(独禁法に引っかからない程度に)。そして、リーダーはチャレンジャーと同じようなポジショニングをとったり製品を開発してぶつけたりすることによって、その存在をかき消す戦術を得意とする。「同質化」という。それ故に、日本コカ・コーラとしては「変わり種ペプシ」にも話題をかき消すような製品をぶつけたいはずなのだ。
しかし、こと、「変わり種」に関してはコカ・コーラは思い切ったことができないのである。なぜなら、「理論の自縛化」にかかっているからだ。古くは「すかっと爽やかコカ・コーラ」に代表されるようなイメージはコカ・コーラの大切な資産である。それを、キワモノで壊すことはできない。また、コーラらしからぬ、コーラの色とは異なる液色の飲料を「コーラ」と称することもできない。
「理論の自縛化」とは、リーダーが今まで発信してきたメッセージと矛盾するようなアピールを行うことによって、リーダーの得意技である「同質化」を封じるチャレンジャーならではの必殺技だ。ペプシブランドを日本で展開するサントリー食品は、「(変わり種ペプシは)2本目を買ってもらおうとは思っていない」と言い切る。それはチャレンジャーならではの割り切った大胆な話題づくりに特化した作戦なのである。
日本コカ・コーラは「話題になりさえばいい!」と割り切った展開はできない。故に、話題づくりにも<健康的でスタイリッシュに毎日を過ごすため>というような大義名分が必要なのだ。
さらに、80%ものシェアを取っているため、新製品が話題になっても「結局は自社ユーザーが買っているだけ」ということでは意味がない。コカ・コーラは男性ユーザーが多い。特にコカ・コーラゼロは男性をメインターゲットとしている。取り込めていない女性を取り込むため、<“美容”や“健康”に敏感な20~30代の女性>というターゲット設定をしているに違いない。それ故、意に反して男性が群がってきて「ゼロ」とカニバリを起こした「カテキン」はさっさと市場から撤退させたのだ。
チャレンジャーはリーダーから潰されてしまわないように、リーダーの100倍知恵をつかえとよくいわれる。しかし、リーダーもリーダーなりに気を遣わなくてはいけないことがたくさんあって大変なのである。
以上の分析は、日本コカ・コーラのニュースリリース、流通関係者からのヒアリング、インターネット上の書き込みから推測したものだ。その正否はわからない。しかし、こうしてまた一人インターネット上で話題にする人間がいるのは日本コカ・コーラの戦略が一つの成功を納めたことになるのだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。