酒井法子と押尾学……この2人の違法薬物をめぐる事件は記憶に新しい。かつて覚せい剤といえば“遠いモノ”だったが、今では学生までもが手を染める時代に。こうした状況に対し、一石を投じようといている男がいる。ライブ活動などを通じ、世直しを図ろうとしている、杉山裕太郎さんに話を聞いた。 [嶋田淑之,Business Media 誠]
2009年夏、人気芸能人の薬物汚染が相次いで発覚……押尾学被告と酒井法子被告だ。とりわけ後者は、一世を風靡した人気アイドルの覚せい剤の所持・使用による起訴ということで世の中はまさに騒然となった。
「芸能界の覚せい剤汚染の実態解明か?」などと、新聞や雑誌に刺激的な見出しがあふれたのは記憶に新しい。もちろん、社会的影響力の大きい芸能界の汚染は重大事だろう。しかし覚せい剤汚染をめぐるより深刻な問題は、職業や年齢を問わず、社会に広く浸透していることだとも言える。
過去5年間の覚せい剤事犯の検挙者数を見ると、1万2000人から1万5000人に増加した。再犯率も毎年5割を超え、しかもその大半は釈放後2 年以内である。また検挙者は芸能人やアーチストはもとより、スポーツ選手、国会議員、教師、ビジネスパーソン、主婦、学生などだ(警察庁、厚生労働省、海上保安庁データ)。
入手ルートも、かつてのようなヤクザとの直接取引だけではなく、外国人やインターネットなど、そのチャンネルは多様化している。今や、日常生活の延長上に覚せい剤は存在し、顔見知りの、しかも“ふつうの人”がいつ検挙されても不思議ではない時代になっている。
こうした社会の現状に一石を投じようと立ち上がった男性がいる。杉山裕太郎さん(35歳)だ。
彼は若き日、暴走族の総長として傷害事件などに関与して逮捕されたほか、覚せい剤を常用して深刻な中毒に苦しむなど、人生のどん底を経験した人物である。両親の愛情に触れて更正に成功し、今では「魂のヴォーカリスト」として、覚せい剤の撲滅を含めた青少年の健全育成のために、全国各地でライブ活動(講演+歌)を展開している。さらにはラジオのDJ、そして俳優としても多忙な日々を送っているという。
今回のインタビューは、「酒井法子保釈、記者会見」(9月17日)の映像が流されているのをリアルタイムに横目で見ながら、大手町のカフェで行われた。
杉山さんはどういう経緯で道を踏み外し、なぜ覚せい剤を常用するようになったのだろうか? そして彼は、どうやって覚せい剤中毒から立ち直っていったのだろうか? さらには、そうした一連のプロセスを経た彼だからこそ見える「真実」とは一体何なのだろうか? 数回に分けてお伝えしたいと思う。
両親に溺愛された優等生が道を踏み外す日
杉山さんは1974年、岐阜県の郡部に生まれ、大垣市で育った。かに座のA型。妹と両親の4人暮らしで、父親は名の知れた金融機関の幹部であり、地元の名士だった。
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杉山裕太郎氏
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