人財育成をいたずらに分解的に、定量的に、分析的に、科学的に、合理的にやろうとすればするほど、個々の働き手は自分をひらく・キャリアをひらくたくましさを失くす。
実際の研修では、この提供価値宣言をいきなりやるのは大変ですから、
私は事前作業を1ステップ入れることにしています。
次のシートを見てください。
「5つの自己紹介」という質問シートです。
この5つの質問を経て、提供価値を考えることを誘(いざな)っていきます。
私個人の例でやってみますと、
1:【勤務先】 (ここは雇用されている会社名がきます)
・私は 「キャリア・ポートレートコンサルティング」 に勤めています。
2:【雇用形態】 (ここは正社員とか契約社員とかフリーランスとかですね)
・そこで私は 「事業主」 として働いています。
3:【職種】 (具体的な職種がきます)
・そこで私は 「人財教育コンサルタント」 をやっています。
4:【業務内容】 (担当業務を書きます)
・日々の私の仕事は 「人財育成研修を開発し実施する」 ことです 。
―――と、ここまでは誰しも簡単に書く事ができます。
さきほど触れた、「私は何を売っているか」という設問に対し、
大方の人は、4番目の設問の答えを書いてしまいがちです。
しかしそれは業務の客観的な説明であって、提供価値を宣言しているものではありません。
次の5番目の設問は、自分の言葉で噛み砕いた主観的な意志の造語をしなければなりません。
私は自分自身の提供価値を次のように考えています。
5:【提供価値】
・私は仕事を通し、 「向上意欲を刺激する学びの場」
を売っています。あるいは、
・私は仕事を通し、 「働くとは何か?に対し目の前がパッと明るくなる理解」
を売っています。または、
・私はお客様に 「働くことに対する光と力」
を届けるプロフェッショナルでありたい。
この問いを通して考えさせたいことは、
私たち一人一人の働き手は、
目に見えるものとして具体的な商品やサービスを売っていますが、
もっと根本を考えると、その商品やサービスの核にある「価値」を売っているということです。
例えば、
保険商品を売っているというのは、根本的には、「安心」を売っているとも言える。
また、新薬の基礎研究であれば、
その仕事を通して、「発見」を売っている、あるいは、
「その病気のない社会」「健康」を売っているととらえることができます。
会計レポートの作成は、取締役に対し、
「正確さ・緻密さ・迅速さによる判断材料」を売っているのかもしれません。
その他、スポーツ選手であれば、
彼らは「感動」や「ドキドキ」「勇気」を売る人たちでしょう。
コンサルタントは「知恵・情報」や「解決」を売っています。
料理人は、「舌鼓を打つ幸福の時間」を売っています。
コメ作りの農家の人は、「生命の素」を売るといっていいかもしれません。
次のページ一人一人の働き手たちを全人的に目覚めさせます。
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【キャリアを開く/拓く/啓くということ】
2009.11.23
2009.10.26
2009.10.11
2009.09.25
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。