人財育成をいたずらに分解的に、定量的に、分析的に、科学的に、合理的にやろうとすればするほど、個々の働き手は自分をひらく・キャリアをひらくたくましさを失くす。
また、MBO(目標管理制度)×成果主義の普及も
一人の働き手を分解的に、定量的に行動させる促進剤としてはたらいています。
その結果、働き手は、その人材スペックの要求項目にみずからをはめ込み、
その枠組みに合わせて成長すればいいという考え方になる。
一職業人として伸び伸びと何か一角(ひとかど)の人物になろうなどという
おおらかな心持ちで我が道をゆく人間はどんどん少なくなるわけです。
そのくせ会社側は、若手従業員に対し、
「5年後どうなっていたいか?」とか
「この先10年間のキャリアプランは?」などと問い詰めたりする。
従業員が答えられるとすれば、せいぜい
「人材スペックのマトリックス表にありますとおり、
3等級の要件a、要件d、要件fの、レベル2+をクリアして、課長になることです」
―――そんな程度のものでしょう。
「キャリアパス」なんていうのは、そんな中から生まれてきた概念です。
組織側が、働き手のキャリアの道筋をいくつか用意してやって、
そこん中から適当に選んで、なぞって上がっていけ―――
まぁ、サラリーマンの世界が「スゴロク」に喩えられるのも、うなずけるところです。
しかし、こうしたキャリアパスを用意してやるやり方も、すでに行き詰っています。
30歳半ばを超えてくる働き手にはこれまで管理職というポストを与えて
なんとか彼らの居場所と道筋を確保できていたのですが、
昨今は、
・管理職のポストが用意できない(組織が右肩上がりで成長していないから)
・そもそも彼らが管理職になりたがらない
・彼らは専門職として等級(そして給料)を上げていきたがっている
・しかし、あまりに細分化された専門職に対し、
組織はそれほど多様なポストやパスを用意できない
・人材スペックの枠組みを離れ、既成のキャリアパスなどに頼らないぞという
たくましくキャリアをひらく意識習慣ができていない働き手はオドオドするばかり
◇ ◇ ◇ ◇
で、冒頭のワークに戻ります。
さて、みなさんはこの空欄に何という言葉を入れたでしょうか?
自分は自動車メーカーに勤めているから、
・『私は 「クルマ」 を売っています』
自分は介護事業会社に勤めているから
・『私は 「介護サービス」 を売っています』
―――というような答えを私は求めていません。
右上に「私の提供価値宣言」としているところがミソでして、
この空欄には、自分が仕事を通じて提供したい「価値」を考えて、書いてほしいのです。
実は、この「提供価値」を考えることが、
職業人としての自分のアイデンティティを確認し、
それを基軸にしてキャリアをひらいていくという原点になるのです。
そしてこれは自発的な「宣言」なのです。
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【キャリアを開く/拓く/啓くということ】
2009.11.23
2009.10.26
2009.10.11
2009.09.25
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。