「好き」を仕事にする、ではなく「想い」を仕事にせよ

2009.10.11

組織・人材

「好き」を仕事にする、ではなく「想い」を仕事にせよ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

キャリア・人生をたくましく切り拓く人は「想いを描く」ことをする。「好き」を仕事にする人には落とし穴がある。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

さて、最後に「想い」について補足を。
私がここで使っている「想い」という言葉のニュアンスは、
「具体的な像・姿」×「意義・理念・使命感」の2要素の組み合わせです。
ですから、imaginationとaspirationの混合といった感じです。

この組み合わせを噛み砕いて表現すると、
「想い」=「自分がこうありたい状態」×「~のために」となりましょうか。

したがって、自分がこうなりたい、ああなりたいと想像するだけを
「想いを描く」とは言わないのです。
そこに「何のために」という意義づけがあって初めて「想いを描く」が成り立ちます。

よく「好き」を仕事にする、のがよいと言われる。

私はこれは、半煮えの考え方だと思っています。
(半煮えということで否定ではありません。好きであることはとても大事です)
私は、好きを仕事にしようと脱サラをした人で、その後すぐに行き詰ってしまう事例を
いくつも眼にしてきました。
それは1つに、
そのことが好きだという愛好者の目線は、
いかにそれを生業として継続させていくかという経営者の目線とは
かなり異なっているので、
好きという熱や思い込みだけでは立ち行かなくなる状況が生まれる。

そしてもう1つは、
「好き」は、ちょっとしたきっかけで、いとも簡単に
「嫌いになった」「飽きた」に豹変することです。

さらに1つは、
「好きであれば何事も何とかなる!」という能天気さのみが一人走りして、
他人の成功イメージをただ単に真似するだけで、
自分独自のイメージを持つことをしない。

ですから、私の主張は、
「好き」を仕事にするのではない。
「想い」を仕事にせよ―――となるのです。

自分がこうありたいという自分なりのイメージを持つ。
そして、その底辺には、「~のために」という意義をしっかり持つ。
「想い」を仕事にするとき、
人は、よいアイデアも湧いてくるし、辛抱強く粘ることもできる、
多少の苦難があっても飽きずに継続ができる。
そうしてもがいているうちに、霧の向こうに自分の山がしっかり見えてくる。

これからは、自分なりの「働く想い」を描く者と描かざる者の間で、
キャリア・人生がくっきり分かれるという二極化が進みます。
想いを描き、エネルギーを無尽蔵に湧かせながらキャリアマラソンを楽しむ人たちと、
想いを持たないがゆえに現状のストレスにあっぷあっぷで、
将来に不安を抱えながら走る人たちと。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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