~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
< あー 懐かしい。 あのマイクか >
「あー、宮田君 どないですかー?」
同じ関西弁のマイクの声を聞くと妙に安堵する宮田であった。
「宮田君。 さっそく聞くけど、アロイコ側がなんで急にイラニ
 アン銀行からテヘラン商業銀行に変えたいといってきたのか、
 その理由、わかりまっか?」
 < そうか。 また質問かいな。 関さんとちごて、マイクは
   質問が多すぎるんやった。 これはこれで疲れるわー。
   考えなあかんもんな  >
「えー。 やっぱり何か資金繰りとか、融資とかいろいろな背景
 があるんやないかと・・・。
 そやから、なんとなくヤバいんとちゃうかと・・・」
宮田は答えながら、曖昧なことしか並べられない上に、こうです!
と、断定できない自分を情けないと感じた。
「なるほど。 さすが宮田君やね。
 まさにそこがポイントやと思います。
 こっちで色々調べた結果やけど、アロイコはここ2年ほどで急成
 長しておって、設備投資も旺盛で、メインバンクであるイラニア
 ン銀行から相当の融資を受けているというのが、うちの国際金融
 部の見解なんですわ」
< なるほど・・・ >
「ということは、どう思いますか?」
< ・・・・? >
「ということは、イラニアン銀行からのアロイコに対する与信枠設
 定の限度を超えている、あるいは何らかの理由でイラニアン銀行
 がさらなるアロイコへの追加保証に難色を示している可能性があ
 りまんのや。
 イラニアン銀行といえばイラン国内で最優良銀行でおます。
 うちの大日商事の役員を含む投融資審議委員会における規定では、
 イランとのプラントなどの大型商談の場合、イラニアン銀行のよ
 うに超一流銀行からのL/Cの発行というのが基本的な条件となっ
 ておますんや。
  
 なぜなら、我が社全体でイラン含む中東関連プロジェクトで焦げ
 付き(債権回収漏れ)が多くなってきてて、それが数値として顕
 在化してえらい大きな問題に赤坂ではなっているからなんです。
< へー。 そんな、やばいんかいな・・・ >
「今回のテヘラン商業銀行というのは、既に東京で調査済みなんで
 おますが、イランの銀行の中でも二流銀行という格付けなんです。
 
 このクラスの銀行は、戦時中のイランではいつ破綻するかもわか
 らへん。
 そやから、テヘラン商業銀行から発行されるL/Cは、いかにL/C
 (信用保証状)というても、最悪のケースを考えたら、はっきり
 言うて、紙くずになるっちゅうことを覚悟せんななりまへん。
 そやけど、どうしてもテヘラン商業銀行でとアロイコさんが言い
 張るなら、条件をつけるしかありまへんな。
 どんな条件をつけなあかんか、わかりますよね?
< もー。 いろいろ厄介やなー! >
 次号に続く。
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