花王の「スタイルフィット」「アタックNeo(ネオ)」、P&Gの「さらさ」など、昨今ニュータイプともいうべき衣類用洗濯洗剤の登場が相次いでいる。洗剤は普段なにげなく使っているコモデティー品の代表格といってもいい。それらは長く進化を止めているようにも見えるが、そのままで生き残っていられるほど現代の市場環境は甘くはない。では、ニュータイプ洗剤は進化の過程でどのような力を獲得していったのだろうか。
■「引き算」の P&G・「さらさ」
P&Gはたぐいまれなるマーケティング力によって、世界の様々な市場において圧倒的な力を誇っているが、こと日本の衣料用洗剤市場では花王、ライオンに次ぐ3番手と後塵を拝している。従来、米国を始め世界市場での成功商品を日本に持ち込む展開をしていたが、今回は満を持して、同社の力の源泉である綿密なマーケティング調査を経て、日本専用商品を投入したのである。その名も「さらさ」と日本語である。
膨大な消費者調査を行ったという同社が発見した日本の消費者ニーズは以下のようなものだ。(7月29日付け・同社ニュースリリースより)<全体の約3割が「本当に欲しいと思う洗剤に出会っていない」と感じていることが明らかになりました(P&G調べ)。この約3割のお客様は、「蛍光剤、漂白剤、着色料が入っていない洗剤を使いたい」という思いがより強く、「今ある洗剤では自分にとって必要ない成分まで入っている気がする」というものでした>。そして、蛍光剤・漂白剤・着色料を無添加を実現した製品に仕上げたという。
これは、従来の「よりきれいにする」「より白くする」という実体価値の大転換である。新たな製品コンセプトを考える際には、中核・実体・付随機能という価値の要素に何かを付け加えることも重要であるが、何かの要素を削除したり、書き換えたりという「引き算」も重要なのだ。引き算のニーズを持っている顕在化したターゲット層は3割であるが、ロハス(LOHAS)の意識も高まっていることから、潜在的なターゲット層はもっと多そうだ。同社は「サステナビリティ(持続可能な社会)の実現」を掲げている。花王が新CIを体現した商品を投入したのと同じく、日本市場専用に開発されたこの商品にかける意気込みが伝わってくる気がする。
以上のように、洗濯洗剤の歴史と最近の傾向をひもといて、価値構造の変化を検証してみた。繰り返すが、「進化」とは、「元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと」であり、商品においては「価値構造を変化させ、価値を高めること」を意味する。どんな商品も進化なくして生き残ることはできない。常に、消費者からどのような価値構造が求められているのかに留意することが肝要である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。