「法事」の深い意味

2007.08.31

ライフ・ソーシャル

「法事」の深い意味

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

日本では、親族が亡くなった後、 初七日、四十九日、初盆・・・ と、かなり頻繁に遺族が集まる風習(法事、または法要) がありますよね。 これにはどんな「意味」があるのか、 考えたことがありますか?

“昔からそうするしきたりになっているから、
 今も続けているだけに過ぎない「形式的な仏事」だよね? 
 だから、その「意味」など考えたこともないよ。”

という方が多いんじゃないでしょうか。

私もそうでした。

しかし、実は、「法事」には深い意味があったのです。

話が飛びますが、欧米の病院では近年、

「遺族ケア」

が試みられているそうです。

遺族ケアは、末期と診断された患者さんを
定期的に小さなパーティに招待するもの。

このパーティは、患者の家族や友人、医師、僧侶などを含む
10-15人の集まりです。そして、患者の話したいこと、
歌いたい歌、流したい涙、なんでも受け止めるのです。

パーティは7-8回繰り返され、
3カ月もすると患者さんは天国に召されます。

遺族ケアの要諦は、その後にあります。

患者さんが亡くなった後も、
同じメンバーが集まってのパーティ(患者さんは写真で参加)が
3-4回開催されるのです。

これには、部屋代もお菓子代もかかる。
医師も参加することがありますが、
この場合の実質的なコストは相当高いものになります。

ドライに考えれば、死んでしまった方のために
さらにお金をかけるのは、ある意味「無駄」なことですよね。

にもかかわらず、効率を徹底的に追求する欧米の病院で、

「遺族ケア」

が行われているのはなぜでしょうか?

その理由は、結果的に

「安上がり」

だからです。

つまり、経済合理性の観点から

「遺族ケア」

は行われています。

実は、「遺族ケア」をしなかった家族を
追跡調査してみると、患者さんの死から1-2年のうちに

急病、突然死、精神異常、自殺未遂、交通事故

など、多くの不幸が起こる確率が跳ね上がることが
事実として把握されているのだそうです。

家族の死は、人にとって

「最大のストレス」

であるということを聞いたことがありますよね。

おそらく、このストレスによって、
遺族は精神的・肉体的に不安定になり、結果として、
さまざまな不幸につながっていくのでしょう。

そうした不幸は、社会的には新たなコストの元です。

したがって、

「遺族ケア」

は遺族に降りかかる不幸を未然に防ぐことができる
(そして、新たな社会的コストも抑えられる)

「優れた公衆衛生学的な方法」

だと、欧米では認められているのです。

さて、日本に話を戻しましょう。

身内の死後、
残された家族にさまざまな不幸が起きることは、
日本でも経験的にわかっていました。

これを私たちは

「死者のたたり」

と呼んで恐れました。

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松尾 順

松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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