JR東日本の駅ナカで1万台の飲料自販機を展開している「(株)JR東日本ウォータービジネス」。同社はこの秋「自販機イノベーション宣言」なる取り組みを開始した。その活動と狙いは一体何だろう。
自販機にもジャパンビバレッジなどのベンダーが、複数メーカーの商品を混載して展開している例もある。オフィスに設置されたジャパンビバレッジの自販機は、ベンダー系のオペレーターが「入れて欲しい飲料があったらリクエストしてくださいね~」と実に親切に対応してくれる。しかし、それらの自販機は好立地に展開できていないという現状がある。
ウォータービジネス社は同社の駅ナカ自販機を「acure(アキュア)」というブランドに統一し、「顧客起点での自販機流通の再構築」を目指しているという。駅ナカという好立地で、「ブランドミックス機」を展開し、顧客にまず、選択肢を提供する。複数メーカーの売れ筋商品が並んだ同社の自販機の品揃えを前にすると、確かにどれにしようか迷う。選択の自由を感じる。
さらに同社は、伊藤園と共同開発した緑茶飲料「朝の茶事」やアサヒ飲料との共同開発による「ワンダ朝のカフェオレ」など、通勤通学途上で購入する商品を顧客に提案する展開も行っているのである。
品揃えや新商品の提供だけではなく、顧客の「不便」の解消にも努めている。かつての100円ワンコインで飲料が買えた時代ならともかく、現在の150円や130円という飲料の価格では、購入する時には小銭がつきものだ。ちょうどピッタリの小銭があるとは限らない。うっかり千円札で購入しようものなら、大量の釣り銭で財布は瞬く間にパンパンになってしまう。電子マネーが普及している今日において、小銭に悩むのは自販機ぐらいではないだろうか。しかし、自販機の電子マネー対応は遅れている。
そこで同社は駅ナカの立地を活かして電子マネー「Suica」対応をいち早く進めた。
「自販機イノベーション宣言」以前に、同社は既に上記の取り組みの成果が出ているようだ。自販機ビジネス頭打ちの中で、同社の自販機は台数ベースで1万台の横ばいにも関わらず、総売上高は対2005年比で136%増だという。
そんな同社の取り組みの一つをJR品川駅の同社自販機で目にした。ハウス食品の「ウコンの力」が自販機に入っていたのだ。「朝の茶事」や「ワンダ朝のカフェオレ」といったオリジナル商品に代表されるように、同社は今まで主に「朝」の購入時点を狙う展開だ。つまり、顧客に朝の飲料購入時に「帰りに飲む時には忘れずに!」と提案しているのだろう。自販機でウコンの力を扱っている例は珍しい。顧客起点で提供商品を選択している同社ならではの展開であるといえるだろう。
「自販機イノベーション宣言」が今後、さらにどのような展開になっていくのか、興味深くウォッチしてみたい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。