‘マーク・ニューソン’ というオーストラリア出身の プロダクトデザイナーはご存知ですか? 彼が手がけた製品のうち、 私たちが一番ピンとくる身近なデザインは、 au携帯電話「Talby」 でしょう。
もちろん、一流デザイナーの感性から導かれた
デザインですから、ユーザーテストの評価が仮に
低かったとしても、修正してくれとはなかなか
言えないでしょうけど!
マークビンのデザインで、
私が個人的に特に気になったのは、見た目の
「使いにくさ」(使いにくそう・・・)
です。
末広がりのすっと伸びたボディライン。
デザインとしては美しい。
でも、調理中の濡れた手で握ると、
スルッと滑って下に抜けてしまいそうに
見えます。
実際、アンケートの結果を見ると、
全体的に良くないのですが、
特に中高年の評価が低くなっていました。
40代以上の男女で、
マークビンを「使いやすそう」と答えた人は
わずかに7.8%に止まっているんですね。
見た目の持ちやすさや、使いやすさは、
いわゆる
「アフォーダンス」
と呼ばれる理論で説明できます。
アフォーダンスとは、
簡単に説明すれば、
・ドアのノブが丸ければ、回したくなる
・レバーであれば、横にひねりたくなる
・横棒が渡してあれば、押したくなる
といったように、モノの形状によって、
私たちの特定の行為が誘発されるというものです。
ビンの形状についていえば、
一般には、マークビンとは反対の形状、
すなわち
「下すぼまり形状」
が持ちやすさを感じさせ、
利用者の評価が高くなることがわかっています。
したがって、マークビンの形状は、
アフォーダンス的にもあまり好ましくない
と言えそうです。
まあ、あまり評価のよろしくないデザインだとしても、
既存のビンが撤去され、店頭に「マークビン」しか
並んでなければ、この製品を選択するしかなく、
結果的にちゃんと売れていくわけですから、
OKなのかもしれませんが・・・!
ちなみに、アンケート対象者のうち、
マーク・ニューソン氏のことを少しでも
知っていたのは5%でした。
ですから、このビンは
「あの‘マーク・ニューソン’のデザインなんですよ」
と訴えたところで、
「ふーん、誰その人」
と軽く受け流されてしまうだけでしょう。
つまり、本来なら期待したいはずの
著名デザイナーが持つブランド効果も
あまり期待できないということですね。
マークビンのデザインを見ていたら、
“いったい誰のためのデザインなのか?”
ということを改めて考えされられました。
*参照記事
『ブランド向上委員会第24回 味の素のパッケージ比較
調味料のビンにデザイナー名は不用』
(日経デザイン、September 2009)
*関連記事『下すぼまり形状』
http://www.mindreading.jp/blog/archives/200607/2006-07-25T1200.html
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2010.07.31
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。