コカ・コーラシステムが販売するミネラルウォーターが絶好調で売れているという。確かに特徴のある商品だが、ナゼ、それほどまでに売れるのか?
Promotionも広告がよくできている。「飲み終わったらクシャッとつぶせる」という製品特性を表わすため、見事なまでにひねり絞られたボトルの上から、緑の葉っぱが顔を出している表現。エコ気分満点である。その効果があって、東京ウォーカーの記事にも「子どもが喜んでボトルをつぶし、資源回収に出してくれる」との声がある。製品や価格だけでない、情緒的な価値も消費者に評価されているのである。
と、ここまでで十分成功要因が挙げられているように見えるが、それだけが大ヒットの理由だろうか。商品が売れるためには、マーケティングミックスの4つのPの整合性が欠かせない。しかし、それ以前に魅力あるターゲットを取り込むことができていることと、そのターゲットから評価されるポジショニングが獲得できていることが重要なのである。
もう一度、振り返って考えてみる。
本当に環境負荷軽減、エコを考えるなら、例え国内取水であっても水道水を浄水して飲んだ方が輸送の環境負荷はかからない。省資源やリサイクルしやすいペットボトルは素晴らしいが、マイボトルを用いてペットボトルを消費しなければ、環境負荷は発生しない。
環境負荷だけではない。マイボトルで浄水した水道水を飲んだ方が、「増量でお得」よりも、もっと自分の財布にやさしい。最近急増している「マイボトル派」なら、そんなことをすぐに考えつくだろう。
「い・ろ・は・す」のポジショニングを二軸のマップで描いてみれば、縦軸がお得感、横軸が環境負荷軽減への貢献となるだろう。「増量でお得で、一番省資源でリサイクルに適したボトル」はミネラルウォーター同士の競合環境では一番有利になる。しかし、「マイボトル」とは比べるべくもない。
しかし、筆者も「マイボトル派」で、SIGのボトルにブリタで浄水した水道水を入れて持ちあるっている。だが、正直白状してしまうと、面倒でなかなか実施に踏み切るまでには時間がかかった。実際にはそんな人は多いはずだ。
「い・ろ・は・す」の売れる理由。それは、「マイボトルほど面倒なことはしたくない。けれど、環境負荷軽減に関してはやはり気になる」というターゲット層が多いからだ。無理なエコは続かない。何より「LOHAS」は「ムリせず継続できること」を重視するものでもあるのだ。その意味で、ターゲット層のニーズをズバリとらえたポジショニングを実現しているのだ。
では、急増中の「マイボトル派」がさらに増えたら、ターゲットの成長性はなくなってしまうのかといえば、その点でも優位だ。マイボトルを何本も持ち歩けないし、時には忘れたり、荷物が多くて持てないこともある。そんな時には「マイボトル派」も「い・ろ・は・す」を選択することになる。
マクロ環境・競争環境・ターゲットとポジショニング・4Pがきれいに整合した「い・ろ・は・す」の快進撃はまだまだ続くだろう。「それゆけ、次は2億本」というところか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。