農業ビジネス花盛りの今、それがビジネスとして「儲かる」にはどうすればいいのかを考えてみる。
■「加工度」というキーワード
売れる農業・儲かる農業という課題を「新規ビジネスとして、もしくは既存の一次産業としての農業で生産された作物を、より高単価・高付加価値で売ってビジネスとしての成果をあげる」というテーマでとらえ直した時、そのキーワードの一つは「加工度」である。
筆者は過去に、地域活性化プロジェクトに参画したことがある。近隣の競合地域と比べ観光資源に乏しい地域であったため、地場の産物を販売して地域をもり立てようということになった。臨海地域故、海産物が豊富であった。しかし、それが問題で、新鮮な海の幸を武器にしようとした場合、保冷輸送のコストばかりがかかってしまい結局は売れる価格設定ができないのだ。生鮮品の場合、「関サバ・関アジ」のようなブランド化ができなければ、その地方でしか手に入らない珍しい産品でもない限り価格のプレミアム分が消費者に受容されないのである。
一つの解としては、「加工度を上げる」ことが挙げられる。
ゆずの生産で有名な高知県馬路(うまじ)村。山間の村で斜面に植えられたゆずは手入れが大変で、しかも農家は高齢化が進み、手入れをより困難にしている。それ故、出荷時にゆずの果実の等級は低くなってしまい儲けが出なかった。そこで村ではゆずを加工して出荷することにした。搾汁したり、煮たり、乾燥させたりと様々な加工を施した結果、玉で出荷するより加工度が高いため、高単価・高利益となったのである。
(参照:制約条件を活かせ!:馬路村の伝説)
■加工度と価格プレミアムの関係
消費者に商品がどのような価格が受容されるかは、商品の価値構造と関係する。
例えば、飲料の場合、飲料を手に入れて実現したい「中核的価値」は「喉の渇きをいやせる」ことである。ミネラルウォーターの相場として100円としよう。さらに、清涼飲料は「炭酸でスッキリする」「甘くてオイシイ」「カロリーが低い」など、喉の渇きをどのようにいやせるのかという「実体的価値」が加わる。清涼飲料の平均価格は150円。100円のミネラルウォーターと比較した場合のプレミアム分が50円というわけだ。さらに、いわゆる「トクホ飲料」は189円が相場であるが、一般の清涼飲料より39円分のプレミアムが設定されている。それは、「喉の渇きをいやせる」という中核とは直接関係はないが、「脂肪を燃焼する」「血圧低下が期待できる」などの効果が「付随機能」がプレミアムとなっているのである。
以上のように考えると、加工度を上げるということは、その作物なり産品の中核的価値に実体や付随機能を付け加えていくこと極めて似た関係である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。