日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(4)

2009.08.25

開発秘話

日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(4)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

自分の肌の細胞を使い医療や美容に役立てる。セルバンクすなわち自己細胞バンクは、高度先進医療のシンボル的な企業だ。細胞ビジネスを立ち上げたセルバンク社の問題意識、今後の展開戦略、細胞バンクが拓く医療の可能性などを探る。

最終回 
「製細胞ビジネスのパイオニアを目指して」

■前代未聞のビジネス、だからこその苦悩

「例えるなら南アフリカでラーメンチェーン店を出すようなものなんです。それって一体なんなんだという最初の疑問をクリアできない限り、絶対に広がっていかない」

新型のカメラを売り出すのなら、話は簡単だ。カメラというだけで人は、その商品価値をイメージできる。誰もが理解している価値に何らかの新しい機能が付け加えられたとなれば、少なくともカメラに関心を持っている人の目には留まるだろう。

「ところが細胞を使った再生治医療といっても、わけわからないですよね。さらに悪いことには、我々がやるのは美容整形ではない。だから例えばビフォア/アフターのように劇的な効果をアピールすることもできないわけです」

八方ふさがりである。自分の細胞を注入することによって皮膚を再生すれば、ほぼ確実に修復効果は得られる。その結果として若返ったように見える可能性は高い。しかしあくまでも再生医療であり美容整形とは一線を画しているのだ。

「取り柄は、まず何よりも安全であること。自分の細胞を使うのだから副作用はありません。そして整形のためにメスを入れたという心理的な負い目もない。とはいえ美容整形を受けたように肌がつるつるになるとか、人相がかわるほど若返ったりすることもないわけです」

美容整形との違い、この説明にだけはくどいほど時間をかけるという。初診の患者さんにいきなり治療することも絶対にない。美容整形とは根本的に考え方が違うことをドクター自らが時間をかけて説明し、その上で一週間以上時間をかけて考えてもらってから再度来院してもらう念のいれようだ。

「美容外科と再生医療を天秤にかけて我々を選んだ方は、必ず不満をもたれますからね。再生医療もそれなりにコストはかかります。細胞の培養などはごく限られたプロが、それこそ付きっきりで作業しないとうまくいきませんから」

対価に見合うだけの効果を期待するのは人情である。しかし、その価値をうまく伝えることができない。これが前代未聞の価値を提供するビジネスの宿命だ。このジレンマをどう解消していったのだろうか。

「まったく新しい概念を説明するメディアとしては、インターネットが一番適しています。とにかくどこまでも掘り下げて説明を尽くすことができる。動画をみせることもできます。微に入り細を穿ちの説明を立体的に組み立てようと思えば、紙面に限界のある印刷物では到底無理。テレビのようなプッシュ型メディアも使えません。見たいときに、見たいだけ見てもらえるネットが最適なんですね」

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