日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(1)

2009.08.04

開発秘話

日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(1)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

自分の肌の細胞を使い医療や美容に役立てる。セルバンクすなわち自己細胞バンクは、高度先進医療のシンボル的な企業だ。細胞ビジネスを立ち上げたセルバンク社の問題意識、今後の展開戦略、細胞バンクが拓く医療の可能性などを探る。

第1回 「細胞バンクで再生医療をサポート」

■目的は保管ではなく使うこと

「銀行にお金を預けて、そのままにしておく人はいないでしょう。細胞も同じで、保管したものは使ってなんぼ、なんですよ」

株式会社セルバンク、社名を直訳すれば細胞銀行である。名前から察するに単に細胞を保管することがメイン業務かと思えば、決してそうではない。

「せっかく若いときの活きのいい細胞を預けていただいても、使わなければ意味ないじゃないですか。我々のミッションは細胞を単に保管することではなく、細胞を使った再生医療サービスを総合的にサポートすることなんです」

再生医療サービスとは『細胞や細胞から取り出した遺伝情報を使い、人体へ何らかのサービスを行うこと』と定義できる。明らかに従来の医療分野にはなかったサービスだ。ここ最近、急激に進んだ研究の成果を、安全性についてきちんと確認した上で活用するサービスである。

「これまでの医療といえば、大きく分けて二つでした。化学物質を人体に投与して何らかの作用を起こさせるか、あるいはメスなどを使って直接物理的な刺激を与えることで何らかの改善をもたらすか。その意味で再生医療は、まったく新しい医療カテゴリーといえます。しかも関わる分野は多岐に渡り、細胞保管はそのごく一部に過ぎません。そもそも通常の医学教育では、まだ再生医療についてほとんど教えることさえできないのです」

当然、現時点では細胞を培養したり、細胞からDNAを抽出できる医者もほとんどいない。この領域は医学というよりむしろ理学や農学系のノウハウが求められるのだ。

「医療施設がいくら再生医療を手がけたいと思っても、現実問題としては我々のようなプロの手を借りないと無理。そこに我が社の存在価値があるわけです」

セルバンクに細胞を保管してもらい、セルバンクが提供する施設や技術を活用して医療施設は、人体へのサービスを行う。これから先、日本をはじめ世界に広がっていく再生医療を支える縁の下の力持ちのような存在、それがセルバンク社だ。

■培養皮膚の研究が原点

「もともと私は培養皮膚の研究をしていました。具体的にいえば自分の細胞を使って皮膚のコピーを作る研究です」

培養皮膚がまず求められるのは、やけど患者の治療用として。やけどがひどい場合には、生命が危険にさらされることもある。あるいは美容目的でやけどの跡を何とか修復したいケースもあるだろう。

「そんなときに使われるのが培養皮膚です。これのメリットは、何といっても自分の細胞から作られていること。すなわち異物ではなく自分自身から作られているので、副作用のリスクがなく、移植に失敗することもまず考えられません。やけど治療には理想的な素材なんです」

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