同じ品質の製品であっても、ブランド付きの製品にはついつい高い値段を払ってしまうもの。ノーブランド製品以上の価格で買わせてしまうブランド力が強いのはどの企業なのだろうか。電機メーカーを例にして比較してみた。[森田徹,Business Media 誠]
ブランド物の紙袋をビニール加工する業者が静かなブームになっているという話を、数年前に聞いたことがある。だから今に始まった話ではないのだろうが、ここのところ、また小綺麗な紙袋に荷物を小分けした女性を街中で目にするようになった。
7月はどこの大学でも試験シーズンで大量のレジュメをスマートに運ばなければならなかったからか、はたまた筆者の通学先が駒場から本郷へと都心寄りになったからかは分からないが、何とも不思議な話である。
そんな紙袋を眺めていて、値段が気になってくるのはきっと筆者の心が貧しいからだろう。実際にオークションサイトで調べてみると、ブランド物の紙袋は数百円程度で取引されているようだ。ブランド物のバッグは(本物ならば)数十万円はくだらない代物だが、それと同じような機能を果たせるブランド物の紙袋が数百円とは不思議なことだと感じる。
しかし、どちらも一応“ブランド物”。堂々と一緒に持っているところからして、紙袋でもファッション性が著しく損なわれるというわけでもないらしい。そうなってくると、ブランドのロゴマークがこの紙袋の価値をどの程度上げているのか、そのあたりが気になってくる。
同じロゴマークが入って1000倍の価格差と言うところを考えると、ブランドというのは本来あるべき販売額に一定額のプレミアムを上乗せするわけではなく、一定比率のプレミアムを上乗せするものと考えた方が良さそうだ。
……と、ここまで考えて、「これを精緻化したモデルを誰かが作っているに違いない」と思ってググってみると、こういった考え方はブランドの独立評価アプローチの中でもインカム・アプローチに区分されるプレミアム価格法と呼ばれ、経済産業省が作成したブランド価値評価モデル(PDFファイル)にも採用されているようだ。
我々が会計で普段よく目にする“のれん”のような、時価総額や買収額から簿価資産を引いたブランド価値の評価は残差アプローチと呼ばれるらしい。ほかにも評価方法は多々あるようなのだが、今回はプレミアム価格法に絞り、「ブランドって、どのくらい商品の価値を上げているの?」という話をテーマとして考えていこう。
▼さまざまなブランドの評価方法(出典:ブランド価値評価モデルの一考察(金川貴一、2004年)PDFファイル)
ブランド力をどう計算するか
プレミアム価格法とは「同品質で『ノーブランドの製品価格』と『特定ブランドの製品価格』を比べ、その超過収益の割引現在価値をそのブランドの価値と見なす」という考え方だ。
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