~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語 を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
「皆さん!」
「このたびは、日本から遠く離れたこのイランの地へようこそ
おいで下さいました。
本日は弊社が世界に誇ります2人の若手有望株であります機械の
宮田と石油の両国両氏のお陰で、このテヘランの地で一大エンタ
テイメントをひらくことができました。
是非とも夜遅くまで存分にお楽しみいただきたいと思います!」
その後、改めて上機嫌の支店長の乾杯の音頭を皮切りにどんちゃん
騒ぎが始まり、興奮の絶頂に達した支店長は自らスーツを脱いで上
半身は裸で、下はステテコ一枚となり、さらに頭にネクタイを鉢巻
代わりに巻いて、リビングの中央で得意のどじょうすくい踊りの真
似事をして丸の内重工の皆様から笑いを取っては、日本酒をあおる
ように飲んでいた。
< まるで新入社員歓迎会でよく見る、酔った新人やないかい。
情けないわ。 ほんま。 >
「ピンポーン」
皆が盛り上がっているその時、突然玄関のベルが鳴った。
すぐに同期の両国が玄関に飛んでいってトビラを開けた。
そこには現地のイラン人電気工事屋が立っていた。
「こんにちは。電気工事に参りました。お昼に永井支店長からお電
話をいただき、リビングの天井のシャンデリアの調子が悪いので
本日夜に修理に来て欲しいという依頼を受けて、ただいま参りま
した」
「ちょ、ちょっと待ってください」
両国は電気工事屋を玄関で待たせて、酔っぱらって上機嫌でどじょう
すくいを披露している支店長のところへ一目散に駆け寄って、大声で
叫んだ。
「永井さん! 電気工事屋が来ましたが、どうしましょうか?!」
その声を聞き、踊りをピタリと踊りをやめた支店長は、見る見る内
に急に冷静になってこういった。
「えー?あー???、そうだった! 頼んでいたことをすっかり忘
れてた! こんな情景を見られては大変まずい。
す、すぐに帰ってもらい、後日出直すようにに言ってくれ!
そして彼を家の外からすぐ出してくれたまえ!」
「わ、わかりました!」
両国はそう答えて、すぐに玄関に向かおうと踵を返したしたその時、
すでに電気屋は気を利かして家の中まで上がり込んできてしまって
いたのだった。
イラン人電気屋は、リビングのドア入り口に立ち、目の前で何十人
もの日本人達がアルコールのにおいがプンプンする部屋でお酒を飲
みながらポルノビデオを見て乱痴気騒ぎをしている部屋の一部始終
を呆然と直立不動の姿勢で見つめているところであった。
それを見た支店長が言った。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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