「恥の多い生涯を送ってきました」。 冒頭から共感を禁じ得ない、太宰治の自伝的作品、「人間失格」。だが、その一文も本を手に取って、ページを開かねば目にすることはない。 生誕百周年で、にわかに太宰ブームが起きている今日とはいえ、文庫本コーナーの書棚の奥に鎮座していたら、どれほどの人が手に取っただろうか。
マンガイラストやアイドルの写真の表紙は、文学作品としてふさわしくないという批判もネットなどで散見される。確かに、通常、文学作品などではあまり表紙に強いイメージを持たせすぎると読み手にバイアスを与えることになるため避ける傾向にあるのも事実だ。
しかし、せっかくの素晴らしい文学作品も、読む人がいなければ、その価値が輝くこともない。人生の輝ける時期を生きている若者にこそ、読んで欲しいという出版社の思いも十分理解できる。
誰もが認知しているが、あえて購入するまでの理由を提示できないような商品は、文学作品の文庫本に限らない。黙っていても売れない商品を、ターゲットを絞って、その関心を喚起する工夫をしてヒットさせる。文庫本のチャレンジから学ぶところは大きいはずだ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。