富野由悠季氏、アニメを語る(3)ガンダムは作品ではなく"コンセプト"

2009.07.28

経営・マネジメント

富野由悠季氏、アニメを語る(3)ガンダムは作品ではなく"コンセプト"

ITmedia ビジネスオンライン
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『機動戦士ガンダム』の監督として知られる富野由悠季氏が7月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会に登場、自らの半生や映画哲学などについての講演と質疑応答を行った。後半では質疑応答の内容を詳しくお伝えする。[堀内彰宏,Business Media 誠]

 どういうことかと言うと、システムが作られた時にはある理念を持って始動したわけですが、よくできたシステムというのはシステム個々に独立し始めるわけです。そのシステムが存続を要求し始めるわけです。すると、そのシステムの中にいる人が意志を発動できなくなってくる、という歴史を実は我々はずっと見てきたのではないか。

 中国では300年王朝が続いた例というのはほとんどありません。システムが永遠に稼働しきれないというものを我々は見てきているはずです。西欧も別の形で実験していて、君主制から帝国主義、そして植民地覇権主義までいった時に何が起こったかというと、システムが存続しきれなくなる。植民地覇権主義などは、システムを存続させるために始動した(システムの)はずなのにです。

 なぜそういうものが瓦解していくのかということと、ネットのシステムというのは基本的に同じではないのかということを今ふと思いつきました。これレトリックかもしれませんが、僕は感覚的にはかなり納得がいきます。そうするとどういうことかというと、“システムの中にいる我々”という風になってくると、ネット検索をするというのはシステムの中で検索している個でしかないわけです。

 またちょっと別の話をしますが、天才と呼ばれている人は地球を救ったことはありません。消費を拡大させただけです。なぜ彼らが地球を救うところまでいかなかったのかというと、頭だけで考えているからだと思います。

 質問者への答えになりますが、我々は実は社会的な動物、群れている動物です。ですから解決方法は1つだけあるのです。「自分が生んだ子は育てなければならない」ということです。ところが、僕自身がすでにそうなのですが、子どもが生まれてずっと毎日見守って暮らしてきた父親かというと、僕はまったく父親失格でした。仕事だけやっていましたから。それでは社会的な動物の行為をしていたとは、今になると思えないのです。

 ガンダムの中でも意識的に使っている言葉があります。“お肌のふれあい会話”と言います。肌と肌が触れ合うコミュニケーション以上のものはないはずなのですが、我々はそれを決定的に投げ捨てている種になってしまったのではないかと思います。

 社会的な動物である我々は、仲間と一緒に子育てをしていかなくてはなりません。しかし、子どもを見て育てるということをしない今の環境を考えた時、本来この環境を変えていかなければならないと考えなくてはいけないのですが、この簡単な命題に対してアクションすることを我々は忘れているのです。赤字を出した大会社の社長がいまだに高額の天文学的な給料をとることを恥と思っていない人類なんてもうおかしいでしょう。これ分かりにくいですかね?

~富野由悠季氏、アニメを語る(4)ガンダムは作品ではなく"コンセプト" に続く~

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