世界最速にして世界唯一のトリプルエンジン搭載ブラウザLunascape。ブラウザといえばアメリカという常識を覆し、世界シェア拡大を狙うスタンスは、あのGoogleを彷彿とさせる。ブラウザで「世界平和実現」をめざすLunascape開発の背景を探る。
いくら素晴らしいモノを開発しても、世に出して多くの人に使われなければ意味がない。そのためにはしっかりしたビジネスを組み立てる必要がある。Googleに関するレポートを書くことで、この教訓が近藤氏の胸に深く刻まれたのだ。
■憧れのソニーへ、そして一年で退職
「ソニーの井深さんに憧れていました。小さい頃から秋葉原で良く見ていたのはソニー製品だし、私が学生の頃はちょっとしたソニーブームでもありましたから」
大学を卒業するにあたって、近藤氏が就職先に選んだのがソニーだった。ITのコアテクをやっている企業であること、そこそこの規模の企業であることといった条件で絞り込んでいった結果、日本ではソニーしか残らなかったのだ。
「実はソニーはその頃、オリジナルのOSまで作っているような企業でしたからね。創業時のベンチャー魂が遺伝子として受け継がれていたことも、ソニーに引かれた理由ですね。松下電器というモンスター企業がありながら、井深氏は果敢にもチャレンジし、ちょうど私が入社した頃に売上で松下を抜いたんです。ちょっとすごいじゃないですか」
ところが、希望に燃えて飛び込んだはずのソニーを、わずか1年であっさりと見限ってしまう。
「見切りをつけたのは早かったですよ。入社して半年ぐらいじゃなかったでしょうか。財務諸表をじっくり読んでみて、ちょっと危ないかな、なんて生意気にも思ったわけです」
企業を分析するなら財務諸表を読み込むこと。これはバリュエーション投資をする際の原則である。しかし、バリバリ理系、かつブラウザ一筋でやってきた近藤氏が、なぜ複雑な企業価値評価に時間を割いていたのだろうか。
「実はいずれ必要になるかもぐらいの気持ちで、財務諸表の読み方や企業業績の将来予測なんかは自己流で勉強していました。ただソニーを辞めようと思ったのは、財務状況に不安を感じただけが理由ではないんです」
そもそもソニーを選んだ理由には、ブラウザ開発があったのだ。ソニーでならLunascapeをもっともっとブラッシュアップして出せるに違いない。そう考えたのも、あながち途方もない望みではなかった。
「当時『VAIOマガジン』という雑誌をソニーが作っていました。その中でVAIOお薦めブラウザとしてLunascapeって書いてあったんです。だから、これをやらせてくださいって直訴したんだけれど、君は所属セクションが違うからって人事がダメだしするんですよね。私が開発者なのに手出しできない。まったく意味不明じゃないですか」
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FMO第24弾【株式会社 Lunascape】
2009.06.23
2009.06.16
2009.06.09
2009.06.02