「友達の友達」がアルカイダであると宣った鳩山大臣が更迭された。自民党の右往左往も、都市伝説化しそうな気配だ。 それにしても、「友達の友達」という微妙な関係から発信される物語には、こうも伝播力があるのだろうか?
“口述の歴史”あるいは“擬似的な歴史”と呼ばれる都市伝説は、大概「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」で始まる。目の前の友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」は、具体的に誰かなどと突っ込んでいくのは無粋というものだ。ましてや、逢わせてくれなんて言おうものなら、空気のよめない奴とレッテルを貼られるに違いない。
そこで、友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」の数を計算してみたい。
まず、1人の社会人が「友達ないしは知ってる」と言えるヒトの数は、どれくらいか考えてみる。それを知るため、手っ取り早いのは、携帯電話の電話帳登録数だろう。
『あなたの携帯電話の電話帳には、現在何件登録がありますか?』
0~100件未満……32.0%
100~200件未満……35.0%
200~300件未満……20.8%
300~400件未満……7.8%
400~500件未満……2.8%
500~600件未満……1.0%
600~700件未満……0.4%
700件以上……0.2%
※エスカーラ読者の女子500人によるアンケート結果より
300件未満に約90%が集中する。
男女も含めた平均数は、150~200人に収まるだろう。
そこで、1人あたり200人くらいが、噂話の引き合いに出せる「友達ないしは知り合い」と想定すると・・・
友達が言うところの友達の友達は、
200×200×200=800万人
である。それに、4親等までの親戚数を掛け合わせると・・・
きっと日本の人口を超える。
要するに、友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」を合わせると、この日本の全部なのである。日本でヒトが巻き起こしているすべてが、「友達の友達」や「友達の親戚」という想定で語り尽くせるというわけだ。
だから、友達の親戚が浜崎あゆみでも、ありだ。友達のお姉ちゃんが福山雅治とつきあってたも、ありだ。宇宙人とつきあってるも。嘘ではない。何でも、ありなのだ。
都市伝説の「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」は、
昔話の「むかしむかしあるところに」と同じようなものなのだ。
現在、世界人口を66億人なので・・・
「友達の友達の友達の友達の友達」まで辿れば、充分に全世界を網羅できる。
そして、なんとなく微妙に近い関係性を強調して始まる都市伝説は、「身近なネタ」ほど、なんとなく信じられやすい傾向を持つ。「微妙なネタ」ほど、「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」は、伝播力を持つ。
gooの『なんとなく信じちゃっていた都市伝説ランキング』のベスト10には、次のようなものが並んでいる。
①富士の樹海では方位磁針が正常に動作しない
②病院での死体洗いのアルバイト
③「ゆとり教育」世代は円周率を3と習っている
④三人で写真を撮ると真ん中の人が早死にする
⑤警察署の取調室ではカツ丼が出る
⑥○○公園の池のボートに恋人同士で乗ると、別れる
⑦しゃっくりが100回続くと死んでしまう
⑧借金返済のためマグロ漁船に乗せられる
⑨ネコを電子レンジで乾燥した人がメーカーに対して裁判を起こした(「猫レンジ」)
⑩皮膚呼吸ができなくなると死ぬ
並べてみてみると、改めて「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」で始まる都市伝説は、どうでもいい。どうでもいいし、ほのぼのとしたゆるーい幸福感すら伴っている。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
私的マーケティング論
2009.09.21
2009.09.18
2009.09.15
2009.07.23
2009.06.14
2009.06.12
2009.05.30
2009.05.24
2009.04.21
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。