インターネットを活用し低価格で生命保険を提供するライフネット生命保険。既存生保に対する問題意識から生まれた同社は、ネット専業の保険会社として幾多の障害を乗り越えて事業開始に至っている。規制にがっちりと守られてきた保険業界に風穴を開けた同社の誕生秘話を探る。
第3回
「吹いていた風」
■すでに変わっていた大きな流れ
「大暴れですねとか、大活躍されてますねとか。業界の会合では婉曲的な言い方はされますが、面と向かっての反論はありません」
意外である。このFMOシリーズで以前ご紹介した『MonotaRo』社のケースでは、旧態勢力からのあからさまな反発があった。それに対して保険業界はみなジェントルマンばかりなのだろうか。
「1995年に保険業法が改正されたことが、強力な追い風となっているのです。金融界では金融ビッグバンが起こり、郵政も改革気運が高まっていました。保険業界も40年体制からの脱皮が図られていたのでしょう。ひとことでいえば私たちは自由化のうねりにうまく乗れたのです」
ただし日本で独立系の生命保険会社が新しくできるとなれば、それは74年ぶりとなる。しかも人を介さないインターネットによる保険のダイレクト販売とあれば、金融庁も精査の上にも精査を重ねざるを得ない。
「もっとも引っ掛かったのは内部統制でした。加えてインターネットを使うのはいいが、お客様とトラブルを起こさない信頼性の高い事務システムを作れますかと心配されたわけです」
金融庁が特に注意したであろうポイントはシステムのはずだ。何しろ日本でそれまで前例がないインターネット上で申し込みをする保険会社なのだ。システムには最高レベルの信頼性が求められたことは想像に難くない。
「申請書類も膨大な量となりました。社長が申請書類のほとんどを自ら書き、かつ担当官と直接交渉した生命保険会社は他にあまり例がないと思います」
申請作業と同時にシステム開発が進められた。システムには思いきった投資が行なわれ、テストに多くの時間が割かれた。ただしシステム開発は、免許がおりる前に進めなければならない。システムができ上がっていないと金融庁は審査できないからだ。
「ある意味、私たちにとっては大きな賭けだったのかもしれません。しかし金融庁のガイドラインをつぶさに読んだ限りでは、求められる条件さえきっちり満たせば、必ず免許はおりると考えていました」
ウェブサイトも徹底的な作り込みが行なわれた。重視されたのは、わかりやすくてユーザビリティの高い設計とデザインである。開業後も絶えず「カイゼン」を重ねていけるのは、インターネットビジネスならではのメリットをフルに活用しているからだ。
「あと特に気を遣ったのはサーバーです。我々の命綱ともいえる個人情報を蓄積するサーバーには、最高度の安全性と堅牢性が求められます。地震対策などのバックアッププランも必要です。当社では東日本、西日本の二拠点にサーバーを設置し、この二つを数分単位で同期しています。おそらくすべての生命保険会社の中でも、最も進んだ形態となっているのではないでしょうか」
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第23弾【ライフネット生命保険株式会社】
2009.05.26
2009.05.19
2009.05.12
2009.04.28