「行動ファイナンス」の意味を知っている人はどのくらいいるのだろうか。筆者の森田氏も詳しくは知らなかったが、『行動ファイナンスの実践』(ダイヤモンド社)を読み、「これは儲かる!」と思ったという。その行動ファイナンスとは一体……? [森田徹,Business Media 誠]
不公平回避と独裁者ゲーム
これら知見の中でも最も「あぁ、やっぱりそうなのか」と感じるのは、「不公平回避(Inequity Aversion)」だろう。経済主体である我々は利己的にのみ振る舞うのではなく、ある程度は利他的に、相手のことを考えて行動するという、見たまんまの知見である。
この不公平回避に対する実証の中で有名なのは「独裁者ゲーム」である。以前、駒場キャンパスでもこの実験の公募をしており、バイト料が良いというので文二生(経済系の教養学部生)の間では一時期有名だった。
いわく、2人の参加者のどちらかが独裁者になり、報酬の取り分を独裁者が自由に決められるというゲームをするときに、どの程度相手に分け与えるかという実験だ。駒場の実験バイトでは、これで得た報酬がそのままバイト料になっていたはずだから、バイト料をとるか己の倫理観をとるかで相当な心理戦を強いられたに違いない。
1回こっきりの付き合いならば、もちろん“分け与えない”が最も合理的な選択だ。経済学的には、経済主体は自らの利得を最大化する行動をとるはずだからである。
しかし実験をすると、やはり独裁者の独占(100:0)が分け方としては最も多かったようだが、多くの独裁者はいくらかは与え、半々で分けるケース(50:50)が独占の次に多かったようだ。平均すると20%程度は相手に与える結果となるようである。Mr.スポック的には“非論理的な”人間の行動だ。
プロスペクト理論と株式プレミアムの不可解
深く考えると数式の登場は免れ得ないからあまり触れたくないのだが、さっきからプロスペクト理論の名を連呼しているので、同理論の簡単な説明とその応用例の1つとして株式プレミアムの不可解(Equity Premium Puzzle)について紹介しておこう。(プロスペクト理論は、英語版Wikipediaではヒューリスティックの一部とされている)
プロスペクト理論とは、いくつかの実証的知見を“価値関数”として表現し、既存の経済学に心理学を持ち込むことに成功した希有な例と言えるだろう。価値関数について詳細は触れないが、ここで導入される心理学的知見は主に以下の2つである。
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さようならMr.スポック!新しい経済学「行動ファイナンス」とは?
2009.05.14
2009.05.12