「行動ファイナンス」の意味を知っている人はどのくらいいるのだろうか。筆者の森田氏も詳しくは知らなかったが、『行動ファイナンスの実践』(ダイヤモンド社)を読み、「これは儲かる!」と思ったという。その行動ファイナンスとは一体……? [森田徹,Business Media 誠]
以前、マクドナルドの会計問題の記事を書いたことがある。とはいえ、書いてはみたものの、担当編集者に「難しすぎる」と大幅に書き換えられてしまった上、大して読まれもしなかった。ここのところ、経済系の話は書かないようにしていたのには、そういった経緯がある。
ただ、相変わらず経済や投資ネタが読まれない傾向はあるが、そろそろその手の話を書かないとアイデンティティーの喪失もいいところなので、たまには経済の話でもしておこう。
というわけで、今回は「金融工学」「ゲーム理論」などと並んで、経済学の新たなフロンティアとなっている「行動ファイナンス(あるいは行動経済学)」の話である。
筆者も行動ファイナンス理論といえば「人間の認知の仕方や心理的バイアスがどの様に経済的な意思決定や市場価格に影響を与えるかを研究する分野である」といった説明とプロスペクト理論くらいしか知らなかった。「それ、何か面白いの?」といった認識だったが、最近『行動ファイナンスの実践』(ジェームス・モンティア、ダイヤモンド社)を読み始め「これは儲かる!」と、鼻息荒く勉強し始めたところ。なので紹介記事を書くには専門的になりすぎず丁度いい学習レベルだろう。
基本的には、既存の経済学に大なたをふる「市場の非効率を肯定する経済学の一分野」のお話である。
Mr.スポックとカーク船長
1960年代から現在まで5つのテレビシリーズが制作されている『スタートレック』という宇宙活劇がある。基本的には、ワープ航法を手に入れた人類と近隣宇宙人の宇宙探査物語だ。独特のデザインの宇宙船は見たことがある人も多いだろう。米系の文献だと分野を問わずしばしば何の断りもなく登場する、米国の超人気テレビシリーズである(もちろん、筆者もご多分に漏れない。どちらかといえばVoyagerシリーズの方が好きだが……)。
そして、行動ファイナンスが語られるときに必ずといっていいほど引き合いに出されるのが、かの作品のオリジナルシリーズ(1966年~1969年)に登場するバルカン人と地球人のハーフである“Mr.スポック”である。
バルカン人とは物語に出てくる近隣星の友好的宇宙人で、感情の起伏には乏しいが論理的思考に非常に長けた存在として描かれ、他のシリーズでもバルカン人はしばしば参謀的な役割を果たす。冷静沈着だが、何か感情的にことを起こそうとすると「人間のやることは非論理的だ。私には理解できない」と言い、オリジナルシリーズでは感情的な冒険家であるカーク船長(こちらは地球人)としばしば対立する。
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さようならMr.スポック!新しい経済学「行動ファイナンス」とは?
2009.05.14
2009.05.12