インターネット広告が比率を高め、ラジオを抜いて、雑誌も抜き、そして来年度には新聞も抜く勢い。では、テレビはどうなるのでしょうか。
こうして浮かんでくるのは、テレビという無邪気な媒体のゆるやかな死。あれだけ大衆に影響を与えた人気者のセールスマンだったテレビの死、なのです。
しかし、リーチ単価(見込顧客一人にメッセージが届くまでのコスト)の格安な媒体であるテレビは、まだまだやれるはず。
ソニーの元社長、出井氏は、「インターネットは+15度のメディア、テレビは-15度のメディアだ」と語っています。つまり、ネットは前のめりで観るもの、テレビは“ながら”でゆったり観るもの、という区別です。
このことは、そのまま能動的に情報を探してクリックしていくインターネットと、ご飯を食べながら、洗濯物をたたみながらなんとなくつけている受動的な見方をするテレビとの決定的な違いを指します。
「受動的に」ということは、マーケティング用語でいえば、プッシュです。多くの受動的な大衆に向けて、新製品のイメージを植え付けることで、衝動買いの前提となる刷り込みが行えるわけです。
ダイレクトメールを送りつけても、開封する行動を起こしてもらうことが必要。雑誌も新聞も、買ってきてページをめくってもらわなければならない。実は、ほとんどの媒体がプルなのです。
しいていえば、ラジオはプッシュですが聴取層は限定的、またメルマガもプッシュ媒体ですが、それでも配信登録はしてもらわなければなりません。インターネット自体も勝手に広告が配信されるけれど、接続の手間と料金は障壁であり、広告主をスポンサーとして無料接続するビジネスモデルは過去に破たんしています。
けれども、能動的に消費活動を行う「イノベーター」「オピニオンリーダー」ではなく、なんとなく暮らしている「レイトマジョリティ」「ラガード」などの一般大衆こそが実は消費のボリュームゾーンであり、これらの層と親しく接触するメディアは不可欠なのです。
つまり、テレビという媒体は、菓子や洗剤などの最寄り品産業にとっては宝である、と。今後、ネットにはできない特技を発揮すること、あるいはネットと一体化する道を模索することはあっても、けっして、テレビというセールスマンは死なないし、殺してはならないのです。
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