人によって見えているものごとは違います。人の立ち位置によって。性質によって。レベルによって。今日はほかならぬあなたには、あなた自身には何が見えていますでしょうか?というお話しです。
でも、その幹部はトレーニングの途中で言いました。
「この教え方だとわかりにくいよ。もっとこういうふうにしたほうがいい。内容を整理したほうがいい」と。
素晴らしいご指摘だと思いますでしょうか?
いや、指摘の内容自体は有り得るとは思いました。しかし、改革に向かうトレーニングの最中にメンバーのいる前で、そういうことを言われると、メンバーが混乱します。
この改善活動にこの幹部は反対なのでは?という思いを抱かれてしまいます。
私は心の中では相当困りました。改革を推進する側の筈の人間が評論に回ってしまっているからです。フィードバックなら、会議室でメンバーがいない時に言えばいいのです。
何もメンバーがいる前でやる必要はありません。有害無益な行動でした。
彼にこの場で求められた最適な行動は、私が教える教え方でもわかりやすくなるように場を成立させることでした。
例えば、さも自分がわからないように装って、いろいろと質問して私に気づかせるような立ち居振る舞いをしてくれればよかったのです。
彼に求めるのは評論ではなくて、場を成立させる努力でした。
でも、彼はそういうことに気が付かない。評論家になっていることに気づかず、しかも自分はいいことをしたぐらいに思っていたでしょう。
私の根回しが足りなかったとは思います。出席した時には場を成立させることに全力を注いでくださいぐらい、決してメンバーの前で、活動の評論はしないで下さいぐらいに言っておけばよかったかもしれません。
ただ、こういうことは多々起こります。やっている側に悪気はないのです。「このフェーズでトレーニングを実施する」とプランに書いてあっても、「改革を推進する側にまわり、決して評論家にならない」という注意事項があっても、どういった行動がそういったことなのか?が見えていなければ効果は上がりません。
結局、経営学というのはいかなる認識ができるのか?という視点、視野への問いであるといえるでしょう。どんな戦略コンセプトも、自分なりの視点でとらえられている範囲でしか、咀嚼できている範囲でしか使えないし、活きたプランにつながらないし、しっかりとした実行につながらないのです。
見えている風景は人によって違います。コンサルタントが、自分が見えている風景から素晴らしいプランを立てても、その見えている風景が、クライアント企業にあっていなければ、素晴らしいプランではないのです。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。