わずか3年で約100店を新規出店。23区内「どこへでも」配達を実現するためにカクヤスが採った拡大戦略だ。しかし、結果はぼろぼろ。全店の半数以上が赤字となった。崖から転げ落ちかけた同社を救ったのが、Amazon、アスクルに並ぶ『カクヤス・モデル』である。
▲カクヤスの店舗数を増やし、東京23区全域をカバーすることによって
差別化コンセプト「いつでも」「どこへでも」「どれだけでも」を可能にした。
■117店出店達成、赤字店5割以上
「君も明日から店長だ。なんてコピーで、人を募集してましたね」
カクヤスは本当に3年間で100店舗、店を一気に増やした。そのためのヒト・モノ・カネは一体どうやって調達したのだろうか。仮にベンチャーキャピタルに頼ったとしても、客観的に分析されれば勝ち目のあるプランとは絶対に判断されなかったはずだ。
「役員会でも賛成してくれたのは一人だけ。銀行さんだって、大丈夫なんですかってほとんど疑ってる。そんな状態で誰かが資金を出してくれるはずもありません。どんな錬金術を使ったと思いますか」
一つだけ、佐藤社長に吹いていた追い風は、世の中の景気が悪かったことだろう。だから、人を採ることは比較的容易だった。とはいえ、店長候補をいくら採用できても、肝心の店がなければ何の役にも立たない。店を出すためには、出店コストがかかるのだ。
「本来なら、莫大な出店コストがかかるはずですよね。ところが皮肉なことにというか、幸運の女神が微笑んだというか。まだ生きていた酒販免許が我々を救ってくれたんです」
免許自由化は国の既定路線である。酒販店経営環境はこの先間違いなく悪化する。だから廃業を考える経営者が増えていた。そこに佐藤社長は目をつけた。つまりカクヤスはそうした店が廃業する際の受け皿となったのだ。これならほとんど居抜きで出店できる。
この仕組みを活用したからこそ信じられないような短期間でカクヤスは、23区内全域を網羅することができた。
「どこへでも・いつでも・どれだけでもを実現できれば、勝ち目はある。そう信じて打った博打は、とりあえず土俵入りまではうまくいった。しかし、いざ勝負が始まると恐ろしい負け戦であることが発覚したんです。なんとトータル117店のうち、実に半分以上が赤字。この時ばかりは、さすがにもうダメかと腹を括りましたね」
明らかに身の丈を超えた出店戦略の末、出した店の半分が赤字を垂れ流す。進退窮まった佐藤社長は、この窮地をどうやって脱したのだろうか。
▲インタビュー風景
代表取締役社長 佐藤順一氏(左)、松尾順氏(右手前)
竹林篤美氏(右奥)、坂口健治(右中)
⇒次回「起死回生の飲食店営業」へ続く(全四回)
『株式会社カクヤス 関連リンク』
・株式会社カクヤス ホームページ
http://www.kakuyasu.co.jp/
◇インタビュー:竹林篤実/松尾順/坂口健治 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:大鶴剛志 ◇撮影協力:㈱オンボード
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FMO第20弾【株式会社カクヤス】
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2009.02.17
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2009.02.03