中味は同じ食品。発売元もブランドも全く一緒。295グラムで180円と150グラムで160円。あなたはどちらを選ぶだろうか。
少人数家庭化、個食化はまぎれもない環境の変化である。そうした変化に対応するためには、消費者の心理に対応した戦略立案が欠かせない。少し古い事例であるが環境の変化で売れ行きが激減し、「個食化」に対応して見事な復活を遂げた食品がある。
<フジッコ―低迷した主力商品を生き返らせる>
http://president.jp.reuters.com/article/2008/12/02/4B105C72-BD16-11DD-A79D-1C123F99CD51.php
<煮豆市場は1998年頃から長期的なダウントレンドに突入。2000年に約5400円だった100世帯あたり購入金額が、05年には約4700円に減少していた>といい、市場調査により煮豆を食べない背景として<「一人暮らしになったから」「夫婦ふたりきりになったから」>という<家族形態の変化を契機とした”煮豆離れ”>が起きていることがわかった。
つまり、<内容量が平均で160グラムある家族向け商品の「おまめさん」は、個食化が進んだ時代に合致しない商品になっていた>ことがわかったのだ。
そこで同社は<食べきれる量目・食べやすい容器・そのまま食卓に置ける>をコンセプトに商品開発を進め、新製品「やわふく」を発売。<工場の能力が追いつかないほどの売れ行き>となった。
既存製品と差別化するために製品の品質も向上させたが、「売れる価格」を実現するためにコストの積み上げではなく製造コストの削減も図ったという。しかし、それでも既存製品よりグラム単価は高くなっている。だが、新しい容器は家庭内で食べたい人が一人でも食べられるような個食対応だ。無駄な食べ残しをしない。自分用に「ぴったり」だという感覚。これこそが単価計算で判断されるのではない、価値観への訴求なのだ。
原材料の高騰に始まり値上げが相次いだ食料品や外食産業。そこに経済の低迷が追い打ちをかけ、消費者の財布の紐は固くなり、企業は厳しい対応を迫られるようになった。安易な値上げは顧客離れを招く。競合との値上げのガマン比べに負ければ顧客を奪われる。
そんな中で、価格は同等か若干引き下げ、内容量を減らす「量目調整」が行われているケースも散見されるようになった。消費者に気づかれにくい「実質値上げ」となる量目調整はネガティブにとらえられがちだ。しかし、上記の3つの例はどれも、実質的には割高なのにもかかわらず、消費者に選ばれるのだ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。