ハードなスポーツに取り組む選手のニーズを深掘りして成功したあるドリンク。しかし、その成長戦略には悩ましい問題が見え隠れしているように思える。
ブランドイメージのジレンマを克服するために、しばしば、サブブランドを作ったり、別ブランドが立ち上げられたりする。もしかすると、他のブランド名でグリコは展開しているのかもしれないと思い、「BCCA アルギニン」で同社のWebサイトを検索してみた。残念ながら、同一カテゴリーのサプリメントしか見あたらなかった。
低浸透圧で水分吸収がよく、液体でBCCAとアルギニンという重要なアミノ酸が摂取でき、エネルギーが得られるという製品特性はこの商品に大きな成長の可能性が秘められていることを示している。商品の「売上げ」とは、「単価」×「顧客数」×「使用頻度」である。ハードなスポーツを行うアスリートと、病人・要介護者はどちらが対象者が多いのか。スポーツの試合や練習の時に用いられるのと、日常の水分・エネルギー補給に恒常的に用いられるのではどちらが使用頻度が高いのか。
「選択と集中」は重要であるが、是非ともブランドのジレンマを克服し、優れた商品を必要とする多くの人に広めてもらいたいと思う。
ブランドを意識しすぎるが故に成長機会を逸している例は、同様に他の市場でも散見される。
プロダクトの中核たる価値はそのままで、それを取り巻くブランドやパッケージという商品の構成要素を変更する。全く別のチャネルで販売する。商品訴求の仕方を変える。などのマーケティングの4Pの他の要素を組み替えることによって、既存ブランドを毀損することなく、別のターゲットに新たなポジショニングを示すことも可能となるだろう。厳しい経済環境の中、どこに成長の芽があるのか。それはどうやったら取り込めるのか。様々な工夫が求められている。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。