脳科学者、茂木健一郎さんが探究する「クオリア」の概念を、商品開発やマーケティングなどのビジネス現場が取り込んでみると何がみえてくるか。
さて、
モノづくりにせよ、サービスづくりにせよ、
つくり手・売り手は、
今後、この『クオリア』という概念を思慮に含む必要があるのかな、と思いついたのが、
今回のこの記事を書くきっかけです。
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で、先ほど来からの『クオリア』とは何でしょうか?
日本におけるその概念の第一人者は、茂木健一郎さんです。
茂木さんによれば、
「クオリアとは、もともとは『質』を表すラテン語で、1990年代の半ば頃から、私たちが心の中で感じるさまざまな質感を表す言葉として定着してきた。太陽を見上げた時のまぶしい感じ、チョコレートが舌の上で溶けて広がっていく時の滑らかな甘さ、チョークを握りしめて黒板に文字を書いた時の感触。これらの感覚は、これまで科学が対象としてきた質量や、電荷、運動量といった客観的な物質の性質のように、数量化したり、方程式で記述したりすることがむずかしい」。 (『意識とはなにか』より)
つまり、一言でざっくり表現すれば、
クオリアとは、「主観的体験の質」ということになります。
先ほど例に挙げたウォークマンやスーパードライ、TDLなどは
強烈でふくよかな主観的体験の質、すなわちクオリアを
多くの消費者の中に生じさせ、かつ、いまだに生じ続けさせているからこそ、
爆発的にヒットをし、そしていまだに売れる定番商品になっているのだと思います。
私たちは、優れた商品の何にお金を払っているのでしょうか?
確かに、その機能性や便益性かもしれないし、
ブランドが持つ物語性とかステイタス性かもしれません。
単純に安さかもしれません。
しかし、よくよく考えてみると、私たちは、
その商品が持つ包括的なクオリアにこそ価値を見出して、
お金を出していたのではないかと思えてきます。
モノづくりやサービスづくりは、今後、
商品特性(機能・便益)をどうするかとか、あるいは、価格をどうするか、
イメージをどう付与するか、広告手法をどうするか、などの局所的なことを統合して、
その商品をして、包括的にどのような“クオリア”を顧客に感じてもらえるかを
真剣に考慮する必要があるのではないかと思います。
「機能が多くて、故障も少ない」「価格が安い」というのは、
日本の工業製品が得意としてきたひとつのクオリアに違いありませんが、
商品が醸し出すクオリアとしては、単線的で広がりがなく、やせています。
機能性だけ、安さだけという1本槍のクオリアでは、
韓国製品や中国製品と消耗戦を強いられます。
(中国製品には、いま新たに、「危険性」というネガティブなクオリアが
付加されようとしていて、ひとつの大きな転換を迫られようとしています)
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。