景気の低迷は家計を圧迫し、生活者は生活防衛のため財布の紐を固く締めるようになった。そんな時代に売れる商品とはどんなモノだろうか。
「濃い味」に対して、「すっきり」で勝負する商品もある。「カゴメ・野菜生活100 Refresh!」。「グレープフルーツ&レモン」と「青リンゴ&ライム」という、いかにも爽やかそうな果汁と野菜汁を50%ずつ、「クリアブレンド」という独自の技術でブレンドし、「これまでにないすっきりした味わい」を実現したという。すっきり感にこだわるのは、同社が消費者調査をした結果、野菜ジュースの飲用シーンで、「お風呂上がり」や「気分転換がしたい時」 という回答が大きく伸長しているからだという。つまり、「身体にいいから」「栄養が取れるから」という理由で飲まれているという先入観を一度クリアして、生活者のニーズの変化をとらえた結果だ。「運動後にもピッタリ」と、新たな飲用習慣を訴求し、需要を掘り起こす狙いもあるようだ。
もう一つ、「すっきり」の飲料がある。「サッポロ・新ドラフトワン」。「ビールより、スッキリ!が欲しい。」というキャッチコピーが印象的だ。さらに商品名とセットで「スッキリの代名詞」とまでうたっている。
「これはビールではない!」というポジショニングを取ろうと、「キリン・Sparkling Hop(スパークリングホップ)」が、<ニュージーランド産ホップのフルーティで華やかな香りをさらにグレードアップさせるとともに、よりすっきりした軽快な味わいに仕上げた>と昨年11月下旬に製品リニューアルを行った。「フルーティーですっきり」は、ビール離れが激しい若年層の取り込みを狙ってのこと。
しかし、「ドラフトワン」はそこから「フルーティー」という要素を歯牙にもかけず、ひたすら「スッキリ」という一点突破で勝負を挑んできているのだ。味わいよりもひたすら「のどごし」にこだわるターゲットに絞り込み、さらにメッセージも先鋭化するという戦略。
ついつい、製品を提供する側としてはターゲットを絞り込むと、「そんなにターゲットはいるだろうか?」と心配になる。また、製品作りも「こんな特性持たせたい」と欲張ってしまう。その意味からすると、新しいドラフトワンは、見事な割り切りをしているといえるだろう。
カップ麺、飲料、トレンドとしては普通の味ではなく、「とことん濃い」か「今までにないスッキリ」か、両極端に振れている傾向が見てとれる。その背後にあるものは、「普通の商品では戦えない」という環境下で、ターゲットを絞って独自のポジショニングを確立しようという戦略が見てとれる。
たった4つの商品ではあるが、普通の商品が、幅広い生活者から求められるという時代が、いよいよ終焉を迎えたという証左ではないだろうか。この4商品の売れ行きは要チェックだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。