大阪府の橋下知事がユニークなプランを発表した。配布が決まった定額給付金を府民から寄付してもらい、教育関連の予算に回すという。2兆円を投資と考えるとき、もっともパフォーマンスの高い使い道はなんだろうか。
格差社会に教育が影響しているとする研究『階層化日本と教育危機』(苅谷剛彦/有信堂)によれば、小学校入学時点ですでに、子どもたちに何らかの格差がついてる可能性が指摘されている。低所得層世帯を中心に、親が教育に対して何ら期待していない可能性があるというのだ。
自分たちが勉強をがんばらなかったから、低所得層に甘んじているのか。あるいはその親の世代から低所得そうだったが故に、勉強をがんばらなかったのか。その因果関係はちょっと措くとして、重要なのは低所得層を中心に教育に期待しない、勉強をすすめない親が増えているという事実である。だから、小学校入学時にすでに子どもたちの間では、勉強に対するモチベーションが微妙に違う。
モチベーションが異なれば、勉強に向かう真剣さ、がまん強さなども当然変わってくるだろう。すると最初は微かだった差が、高学年となるに連れてどんどん広がっていく恐れがある。しかも、そうした子どもたちの家庭では、親が子どもに勉強しなさいと強制することもない。
算数でいえば恐らくは割る数が二ケタのわり算が入ってきたあたりで何分の一かが脱落し、さらには分数に進んだ時点で相当数の子どもが算数を決定的に嫌いになる。中学校でいきなり抽象化する数学など最初からお手上げである。
勉強ができないことをプラス評価するインセンティブデバイド
問題なのは、彼らはが学校の勉強から降りることを自己評価するようになること。ここで決定的なインセンティブデバイドが起こる。当然の結果として身につける教育レベルに差が付き、それが所得に反映されるサイクルができつつある。というのが『階層化日本と教育危機』の問題意識である。
初等教育時点で降りてしまった子どもたちが、就職に際して不利な状況に置かれることは言うまでもない。もちろん、何かのタレントを持っていれば話は別だが、がまんしてがんばって勉強することをプラス評価しないのであれば、仕事をがんばってがまんして覚えることもプラス評価しない可能性が高い。彼らの就労機会は著しく狭いものとなるだろう。
格差を防ぎ国力を高める投資
その先に何が待っているのか。おそらくは格差の強化であり、固定化だろう。そこで、冒頭の補助教員の出番となるわけだ。とにかく小学校低学年時代、まだ接し方次第では子どもたちのモチベーションを刺激することが可能で、その成果が出やすい段階で落ちこぼれることを防ぎ、勉強するおもしろさを感じさせ、少しがまんして学ぶクセをつける。
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