「予約しないと買えない!」とネットで話題騒然のソニーのバイオ・type P。しかし、実際に購入予約をしたり、検討したりしているのは熱狂的にBlogなどで記事をアップしているようなパソコンのヘビーユーザーだけではないようだ。
プロダクト・ライフサイクルで考えれば、製品の市場が成熟化するに従って、製品を構成する価値の要素が、「中核」から次第に「実体」「付随機能」へと、3層の外へ外へと移行していくのが常だ。例えば、既に成熟期を迎えているコンパクトデジタルカメラの市場は、「キレイにデジタルで画像が残せる」という「中核」である画素数競争に始まり、薄さやコンパクトさという「実体」の競争を経て、昨今では「そのままBlogやSNSに画像をアップできる」とか、「プリント機能が付いている」といった「付随機能」の競争となっている。
ネットブック市場が早晩、成熟化することは目に見えていたと言えるだろう。しかし、ソニーの凄さは、そこに「価格競争」を持ち込まなかったことだ。9万円台という、相場の倍近い価格。それを、「美しい」という付随機能で通常のネットブックとの戦いをあっさりと回避したのだ。
「ネットブックはセカンドマシン」という常識ではなく、女性の「ケータイからの乗り換え」を促進し、「小さい、軽い、美しい」メインマシンとしての購入を狙う。メインマシンと考えれば、通常のノートパソコンに比べ、9万円台はむしろ割安に映る。ユーザーの利用ニーズがケータイからの乗り換えであれば、まさにネットブックらしい使い方であり、スペックの問題は全くない。
果たして、ソニーが女性層をtype Pで本当に狙っていたのかは定かではない。しかし、潜在的な女性のニーズをしっかりととらえたことだけは確かなようだ。
製品のスペックなどだけを考えるだけでなく、ターゲットと、そのKBFをじっくる考えることの重要性を改めて認識させられた気がした。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。