『フロー』心理学者の説く“仕事の楽しみ”

2007.06.28

仕事術

『フロー』心理学者の説く“仕事の楽しみ”

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

内発的動機は本人の内に無限のエネルギーを湧かせ、外発的動機は結局のところ本人や組織を消耗させてしまう。仕事で「フロー」を得るためには・・・

まったくの補足ながら、岡本太郎の本が手元にありますので、
そこからも一節。

「芸術というのは認められるとか、売れるとか、そんなことはどうでもいいんだよ。
無条件で、自分ひとりで、宇宙にひらけばいいんだ」。
『壁を破る言葉』より

つまりチクセントミハイは、
働き手が、自分の仕事を自己目的化でき、その行為の中でフローの状態を獲得するとき、
無限に内発的動機が湧き上がり、よりよき仕事ができるといい、
そうなるともはや仕事(労役)と遊びの区別はなくなるといいます。

そして、賞罰、いわゆるアメとムチによる外発的動機づけは、
最終的に人を疲弊させると説きます。
また、物的報酬はゼロサムの配分であって、原資が有限であるため
実施に限界がくることも指摘しています。

いわずもがな、
昨今の成果主義は、もっぱら、この外発的動機を全面的に押し立てて、
定量的な競争を強要したところに問題がありました。

**********

誰しも、自分を没入できる楽しみを仕事の中に見出し、
フローを経験したいものですが、
組織から与えられる“やらされ仕事”を、どう自己目的化できるというのでしょうか?

私は、この問題の解決には、
個人の意識が半分、
組織の意識が半分、必要だと思います。

○まず、個人の意識について:

どんなやらされ仕事にも、楽しみや喜びは見出しうる、
どんなささいな仕事にも、進化や創意工夫の余地は無限にある
といった仕事意識を各人が立てることでしょう。
それが、プロというものです。

演劇の世界には
「小さな役はない。小さな役者がいるだけだ」
という言葉があるとおりです。

○次に、組織の意識について:

「ジョブ・デザイン」とは職務設計のことですが、
現在の多くの事業組織において、
ジョブ・デザインは単に、業務の分業をどう個人に割り振るかだけの
「ジョブ・ボリューム分け」と「ジョブ・レベル分け」になっている感があります。

「ジョブ<ジョイ>デザイン」はどう可能なのか?
「ジョブ<バリュー>デザイン」はどう可能なのか?
「ジョブ<クリエイション>デザイン」はどう可能なのか?
「ジョブ<イノベーション>デザイン」はどう可能なのか?・・・
その仕事・業務にまつわる心的・価値的な考慮がほとんど放置されている状況のような気がします。

おそらくこれは組織文化という中長期の辛抱強い習慣づけのプロセスによってのみ
可能になる問題ではないかと思います。

・「仕事とは、上からの押し付けではなく、自分に対してのチャレンジ」と
一社員が平然と言ってのけるシスコの組織風土。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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