ユニ・チャームといえば女性用生理用品の会社。誰もがそう思うところだが、実は違う。同社の売上をみれば,すでに生理用品を超えるアイテムがある。それが何だか、おわかりになるだろうか。
とはいえマーケットはまだ立ち上がったばかり、プロモーションや流通対策次第ではシェア争いを逆転する余地はあった。実際、この手の介護用品に関しては市販ルートの他に業務用ルートがあり、導入期には業務用ルートをどのように押さえるかが勝負を大きく左右したのだ。
ちなみに筆者が関わっていたのは、さらに下位のメーカーである。しかし下位とはいえ、チャネル対策を徹底的に強化しテレビCMなどを相当数投下することで、一時的ではあるが首都圏でトップシェアをとった。市場はまだそれぐらい流動的で下克上の余地も十分あったのだ。
ユニ・チャーム、その後の展開
その後、ユニ・チャームはいち早く高齢者の排泄ケアを研究する施設を立ち上げる。全国の老人向け施設を回って地道な情報収集にも努める。その背景にはおそらく、確固としたビジョンがあったのだろう。やがて日本は必ず高齢化社会になる。そのときには大人用紙おむつが必需品となるという。実際に人口推移を考えれば、5年先10年先の年齢別人口分布は、ほぼ確定した未来として読めるのだ。
そうした未来像とビジョンに基づきどんな製品を開発すべきか。ユニ・チャームはニーズを丹念に調べ上げていった。
もちろん日本が高齢化社会になることは、当時マーケットに参入していた企業はすべて理解していたはずだ。とはいえマーケットの伸びは予想よりもかなり遅れ気味となった。そして意外に緩やかな市場の拡大ペースに見切りをつける企業も出た。
なんとシェアトップだったP&Gは早々と介護用品事業を売却してしまっている。一方でこうした動きに対して脇目もくれず、ユニ・チャームはひたすら製品を改良し、同時にユーザーを啓蒙していった。
大人用紙おむつにつきまとうネガティブなイメージを払拭するには、どうすればいいか。あくまでも推測だが、ユニ・チャームの問題意識はこの点に絞られていたのではないだろうか。なぜなら、ユニ・チャームには、大人用紙おむつが高齢者のQ.O.Lを高めるために必要なアイテムだという信念があったから。
そして歴史は繰り返す
女性用生理用品は、決しておおげさではなく女性のQ.O.Lを大幅に高めた。同じく大人用紙おむつも高齢者のQ.O.Lを高める必需品、そう考えたユニ・チャームはきめ細かくプロダクトラインを整備していく。
その結果、今では大人用紙おむつ市場でユニ・チャームが占めるシェアは約40%、当初のP&Gを超え、ほぼ相対的安定シェアに届いている。そして現状のナンバー2が花王、シェアは15%に過ぎない。そしてユニ・チャーム社内部での売上をみても、大人用紙おむつは女性用生理用品を抜いた。
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