2004年、世界一多くのビールを集める店としてギネスから認定されたデリリウムカフェ。その記念すべきアジア第一号店は、事業責任者・菅原氏の緻密な戦略と大胆なアクションから生まれた。
「確かに一番手は頭一つ抜けているけれど、あとはドングリの背比べです。正直、これはいけるという確信がありました」
ところが、間違いないはずの読みは見事なまでに外れてしまった。タイミングが早すぎたのかもしれない。すなわちその本質が広く理解されるほどベルギービールはまだ普及しておらず、逆にわずかだけれども存在するマニアのニーズを受け止められるだけの品揃えが当時はまだできなかった。
「こんな濃いビールは一杯でたくさんだとか、たかがビール一杯なのにどうしてこんなに高いんだとか。一方ではたったこれだけの種類しかないのかとか散々ですよね」
客の言い分にも一理ある。何しろベルギービールの輸入元がわずかに数社と限られているから、店に並ぶのはせいぜい十種類がいいところ。代理店を通して仕入れる限りは、品揃えはもちろん価格設定も極めて限定的な制約条件の下で戦わなければならない。
「結論ははっきり出ました。何としてでも自分たちで輸入するしかない。ラッキーだったのがタリーズ時代に知り合った商社の社長が、一緒にやってみようと言ってくれたこと。それなら、と喜び勇んでベルギーに乗り込んだんです」
向こうに着いてまず訪れるのが「デリリウムカフェ」。ベルギービールのセレクトショップであり、自社ブランド『デリリウム・トレメンス』を作っている醸造所がオーナーでもある。2004年には2004種類ものビールを揃えていることで、世界一数多くのビールを楽しめるビアカフェとしてギネスブックから認定された正真正銘、ビールの聖地だ。ここでいろいろな銘柄を試し、すばらしい味わいのビールを見つけるとすぐにその醸造所にアポをとりつけ輸入交渉を行った。通い詰めるうちにデリリウムカフェを日本でも開きたいと思うようになったのだ。
←2004種類のビールを楽しめる店デリリウムカフェに与えられたギネスブックの認定証
↓深夜3時ごろ、ブリュッセルのデリリウムカフェ本店で、自分のためにデリリウムを注ぐ菅原氏
「このカフェでいろんなビールを試してみて、大げさじゃなく僕のビール観は根底から覆りましたね。これはモー娘。もしくはAKB48の世界なんですよ(笑)。妙なたとえかもしれませんが、ピンで勝負となるとちょっと厳しいけれど、必ず自分にジャストフィットする相手が見つかる。それを探す楽しさ、出会う喜び、その類まれなる味わいがベルギービールの魅力。その魅力を紹介することこそが、僕が日本のビール好きに提供できる価値なんだって」
次のページベルギービール デリリウムカフェ 東京 霞ヶ関/赤坂
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第16弾【デリリウムカフェ】
2008.11.11
2008.11.06
2008.10.29
2008.10.21