国際会計基準コンバージェンスの短期対応項目の一つである「棚卸評価」。 このたび公表された後入先出法の廃止について解説します。
といった反対意見や特別対応を求める意見が多かったようです。
特に資源の乏しいわが国では資源の長期備蓄という概念が他国に比べて非常に強いのでしょう。
その備蓄資産が持つ保有利益をどのタイミングで認識するかについては、日本独自の見解をもう少し検討しても良かったのではないかと感じます。
前回も書いた通り、これはコンバージェンスの一項目であり、国際会計基準の受け入れ(アドプション)ではありません。
あくまで自国基準の問題なのですから、国際会計基準に右に倣えする必要はないのですから。
特に長期備蓄が伴うような資源系産業において、原油高騰前に仕入れた棚卸資産の保有利益が今後一気に実現されるという、キャッシュを伴わない莫大な利益が計上され、損益を歪めていくということが起こることを危惧してしまいます。
上記のような意見を踏まえてか、ASBJの改正基準では、
適用初年度において、保有損益が一気に実現化することによる影響を考慮し、
「適用初年度の期首棚卸資産に関わる保有損益相当額のうち当期の損益に計上された額」を、特別利益として計上可能ということにしています。
何だかややこしい言い回しですが、期首時点で保有損益を持つ棚卸資産が当期に払い出された場合は特別利益とするということで、
期首保有損益相当額×〔当期払出数量÷(期首保有数量+当期受入数量)〕
の式で算出されます。
下図の例で言うと、
\\4,000×〔2,000÷(1,000+3,000)〕= \\2,000 が特別利益となります。
[図解]
後入先出法を採用している企業は、自社の保有損益をしっかりと把握しておく必要がありますね。
ところで、後入先出法というと、よく会計の授業では生鮮食品を例にとって説明されますよね。「生鮮食品は新しいものから売れていく」という消費者購買特性があるからです。
今後、企業は後入先出での評価は出来ません。
皆さん、牛乳は手前から取りましょう! (笑)
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
現場のための国際会計基準解説
2008.10.14
2008.10.01