「金融庁、国際会計基準の導入検討表明」という報道。 焦って誤った対応をしないためにも、しっかりと基礎知識を身に着けましょう。 今回はコンバージェンスとアドプションの違いについてです。
9月17日に「金融庁、国際会計基準の導入検討表明」という記事が各メディアで報道されました。
タイトルだけを見ると、日本でも国際会計基準(IFRS)での報告が義務付けられるのか・・と焦ってしまいますが、各国の国際会計基準の対応にはConvergence (コンバージェンス)とAdoption(アドプション)という二つのアプローチが存在します。
まずは、基本中の基本であるこの2つのアプローチの違いについて整理します。
■ Convergence vs. Adoption
2007年の企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準委員会(IASB)によって合意された東京合意以降、日本はConvergenceという方針を採っています。
Convergenceとはつまり、「両基準の差異を解消し、日本基準をIFRSと同等と評価されるようにする」ということです。つまり、この場合は自国基準維持です。
両基準の差異については、EUの同等性評価プロジェクトによって、重要な26項目の差異が指摘されており、これらを2008年までに対応することで合意しています。
一方国際会計基準のAdoptionとは「IFRSをそのまま受け入れる」ということですから、日本企業にとっては現自国基準とは別の基準での財務報告が必要になります。
このように「国際会計基準の導入」といっても、広義の意味ではその方向性はConvergenceかAdoptionの2つが存在することになります。
また、Adoptionには強制適用と選択適用の2つのパターンが考えられますが、
先立って米国がAdoptionへの方針転換を表明したことにより、いよいよ日本もAdoptionへという見方がされたようです。
ちなみに米国は当座は選択適用のスタンスで、強制適用とするかどうかは2011年までに判断するとしています。
[Convergence概念図]
[Adoption概念図]
■ 今回報道の論点
各報道のトーンだと、米国がAdoptionに傾いたことにより、日本もConvergenceからAdoptionに向けて方向展開すると誤解されてしまいそうです。
しかしその後の金融庁の対応を見る限り、方針転換をしてそのままIFRSを受け入れるというものではなく、Convergenceがまずありきの姿勢を崩していないようです。
ConvergenceによりIFRSとの差異を少なくした上で、Adoptionしていく方向性ですので、
Adoptionをするにせよ、2011年以降となるはずです。
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現場のための国際会計基準解説
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