国際会計基準コンバージェンスの短期対応項目の一つである「棚卸評価」。 このたび公表された後入先出法の廃止について解説します。
2008年9月26日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」を公表しました。
これは国際会計基準のコンバージェンス項目の一つとしてASBJが対応したものです。
→前回記事参照
内容としては、2010年の4月1日以降開始の会計年度から、棚卸資産の評価方法として
「後入先出法(LIFO)」が認められなくなるということです。
まずは解説から入ると、
棚卸評価に関する基準は、既に2008年4月以降開始の会計年度では「低価法」が強制適用されるという形で改正されています。
そして更に、今回、棚卸の評価方法としてLIFOの廃止です。
LIFOの考え方とは、御存知の通り、最も新しく取得されたものから棚卸資産の払い出しが行われる方法であり、棚卸資産を払い出した時の収益(販売価格)と費用(売上原価)が最も近い水準で対応させることが可能という点で、資源産業等、仕入価格の変動が大きく、かつ仕入価格が販売価格に影響を与えやすい業種に主に採用されてきました。
一方で、B/S上の観点で言うと、大昔に取得した棚卸資産が当時の市況価格のままB/Sに記載され続け、市況変動が反映されないということが起こります。
この状態を「棚卸資産の保有損益が反映されていない状態」と言います。
下図の例で説明すると、LIFO評価での棚卸資産は平均法に比べ、\\25の保有益が反映されていない状態となっています。
正確には、低価法の義務化により、棚卸資産の価値が下落した場合には正味売却価額まで引き下げられますので、棚卸資産の保有益のみが繰り延べられる状態になります。
今回のLIFO廃止に至るASBJの説明は
① LIFOでは保有損益の正しい反映が出来ない
② 期首棚卸数量 > 期末棚卸数量となるように当期購入量を調節することで、繰延べた保有損益の認識タイミングを調節出来る。
ということです。
この見解をどう見るかについては意見が分かれるところでしょう。
私見ですが、今回の改正はどうも会計基準としての妥当性よりも、国際会計基準のコンバージェンスの短期的対応が優先された感があります。
ASBJ自身も同改正基準 第34-12項でそのことを認めていますけど。
公開草案時に出された意見では、
■ 在庫保有利益を排除しており、収益費用対応の観点から適切な方法である
■ 米国のようにLIFOのデメリットを補う開示を行う方が良い
■ 保有利益の実現に伴う税負担への考慮が必要
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現場のための国際会計基準解説
2008.10.14
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