2008年2月23日朝日新聞夕刊より。
かなり古いが、2008年2月23日朝日新聞夕刊の、大学生が就職活動の参考にするページだろうか、そこの「お父さん・お母さんの就活講座」というコラムに、こうあった。
《「1レベル下の企業を目指す」という言い方をよく耳にする。/しかし、そもそも企業にレベルってあるのか。レベルを下げるって、どういうことなのか。どうやら「無理せず、自分の身の丈にあったレベル」というような意味らしいが、結局、楽をしたいということじゃないのか。/「残業時間が1レベル下」「厳しさが1レベル下」「与えられる責任が1レベル下」。そう思える企業を選ぼうとしても、そんなものは幻想に過ぎない。/肝に銘じてほしい。仕事にレベルなどない。企業にも、レベルなどないのだ。》
なるほど。なかなか美しい言葉ではある。
しかしながら、どの程度の割合の読者が、このコラムに激しく賛同するんだろうか、ということに、ひどく興味がわいた。朝日さん、読者アンケートでもとってくんないかな。年代別・性別で切ってみると、なかなかおもしろい結果が出るかも。
さて、この文章、国語力的には二通りの読みかたができる。
「残業時間とか厳しさとか責任とか、もちろんそれ以外の待遇についても、そして業績は言うまでもなく、企業によって高低のレベルの違いはある、確かにあるんだけど、若いモンが何を悟りきったようなことを言っとる、ドーンと上を目指していったらんかい!」的な趣旨と読むのが1つ。
つまり、レベルの存在を暗黙の前提としつつも(「ドーンと上を目指していったらんかい!」)、そのスケール上の下を見させないよう、「レベルなどない」というレトリックを使って、若者を鼓舞している、という解釈。
残業時間や厳しさや責任については、一企業内でも個人によって異なるから、一概に「あの企業のレベルは」とは言えないだろうけど、制度としての待遇や業績には、厳然とした差があるからねえ。
学生さんも、それをある程度は参考にして志望企業を決め、それによって人気企業ランキングが決まる。ランキングの高い企業はなかなか入社できない=レベルが高い、という受け止め方、学生さんはするでしょう、やっぱり。
「そんなことにビビるな、ドーンといったらんかい!」という趣旨は結構なんだが、それで「よっしゃー!」となって、最後の最後まで志望企業を変えず、就職浪人しちゃったら……という思いを禁じえないわけです。
もう1つの読みかた。
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