塾の講師が学校の校舎で授業を行う東京都杉並区立和田中の「夜スペ」。この「夜スペ」の賛否についてはすでに多くの議論がなされているが、スタートして半年以上が経ち、見えてきたのは学習塾の営業部隊となった学校の姿ではないのだろうか?
こんな事態を私たちは、良しとすべきではない。
●「夜スペ」が突きつける「公」とは何か? という問い
人によっては、「夜スペ」を主催するのは学校ではなく、
保護者や元PTA、教員志望の学生らが参加する「地域本部」なのだ
から構わないという人もいるかもしれない。
だが、私はこの発想には大きな危険が潜んでいるようにも思う。
近年の教育改革の大きな特徴のひとつは、
教育の世界に市場原理を持ち込み、消費者としての保護者のニーズに
対応するかたちで、公教育全体に私事性を行き渡らせている点だ。
「夜スペ」であれば、「地域本部」からの「学力」伸長へのニーズを
汲み取った結果、実績ある特定の学習塾(ここではサピックス)への
加担が生まれ、さらに「授業料」を払える、払えないという教育の場で
の家庭間格差を生じさせてしまったことになる。
元来、学校とは公共財として広く国民に学校知・社会的規範を伝達し、
社会的基盤としての認識力を浸透させる機関であったはずだ。
今一度、私たちは私事性をどんどん容認し、自分のためだけに教育
を利用しようとする近年の風潮を、考え直した方がよい時期に
差し掛かっているのだと思う。
言うまでもなく学校は、公共財だ。教育も公共財だ。国家の言いなり
になるのは無論のこと、実は、個である保護者の言いなりにも、生徒の
言いなりにも、教育はなってはいけないのだ。
今一度、「公」という視点を問い直す時期が、この国には来ている。
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツの
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2008.09.23
2008.10.05
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。