コスト削減は活動の結果にしかすぎません。 もっと大事なポイントがあります。 それはあらゆる情報を収集分析して、落しどころを作る能力であり、このような価格交渉やサプライヤセレクションを出来うる能力を企業の業務として定着させることです。
私は調達・購買分野に特化したコンサルティング会社を経営していますが、自分で言うのも何ですが、あまり商売が上手い方ではないと思います。
社員にも、ましてやお客さんからも言われます。
もともと口が上手いほうではないですし、できないことは「できないです。」ってはっきり言いますし、わからないことは「わかりません」って言いますし、お客さんだけでできること、やらなければならないことは、「それは自分たちでやってください。」と言ってしまいます。
あまり誉められることではないのかもしれませんが、私はある信念を持っているからです。
それは「短期の自社の利益よりも中長期での顧客の価値に貢献して信頼を得る」ことです。
最近は大分少なくなりましたが、過去コンサルティング等の提案現場で「それでいくらコスト低減できるのか?」という投げ方をされました。また所謂「ベンチマーク値との差でどれだけコスト低減できるのか?」ということを求められるケースも多々ありました。
そこでもっともらしく「XX億円削減可能です。」と宣言できればいいですが、考えてみてください。そんなことはまやかしに過ぎません。
購買経験者なら分かるでしょう。
だいたいバイヤーは価格交渉やサプライヤセレクションを行う時には、所謂「落しどころ」なる価格レベルを持っています。
この「落しどころ」はあらゆるサプライヤからのヒアリング情報、ベンチマーク情報、過去の履歴価格情報、市況情報、需給の状況その他もろもろの情報を考察して、「だいたいこれくらいだろう」というバイヤー個人もしくは組織の判断で決められるものです。
この「落しどころ」が会社としての目標価格として設定されるケースと、バイヤー自身が持つ感覚値として存在する場合の両方のケースがありますが、いずれにしても価格決定時には事前に予測した「落しどころ」を目標に交渉を行うのが普通です。
但し、実際の現場では、この「落しどころ」が外れるケースが殆どです。
これは「落しどころ」まで至らないケースもありますが、予想以上に下がってしまうケースも多々あります。
予想以上に下がった場合「良かったですね。」になりますか?
「なりません。」むしろ「今まで何をやってきたんだ?」につながります。
いずれにしても日々交渉を行っているベテランバイヤーにしてもコスト低減額を事前に予測することは難しいことなのです。
ですから私は「XX億円削減可能です。」などとは言いません。せいぜい「XX億円削減を目標にしましょう」とまりです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。